民主党政権は東日本大震災のどさくさにまぎれて、この間、言論・表現の自由を規制しかねない政策を次々と打ち出している。
ひとつは、総務省によるネット事業者への「要請」であり、もうひとつはコンピュータ監視法案の閣議決定だ。
ところがどちらも、震災に関する報道で新聞、雑誌は埋め尽くされ、大きく報じられることはない。他方、規制のターゲットであるネット上では、こうした政府の動きに反対ないし慎重な意見が噴出している。
まず、総務省の「要請」についてみてみよう。これは正式には4月6日付の「東日本大震災に係るインターネット上の流言飛語への適切な対応に関する電気通信事業者関係団体に対する要請」のこと。
その要点は、地震などの情報で、「国民の不安をいたずらにあおる流言飛語が、電子掲示板への書き込み等により流布している」ため、関係省庁は「サイト管理者等に対して、法令や公序良俗に反する情報の自主的な削除を含め、適切な対応をとることを要請」する、というもの。
この間、確かに、ネット上での流言飛語には目にあまるものがある。とくに被災地での「外国人窃盗団が暗躍している」「強盗や強姦が多発している」などのデマはいたずらに不安を掻き立てる。かつて関東大震災で「朝鮮人が井戸に毒を流した」などの流言飛語に乗せられた人々が朝鮮人を虐殺した歴史を彷彿とさせる。
こうした例は、まさに悪質な流言飛語だとわかる。だが、福島第一原発の事故による放射能漏れが起きた後の様々な言説はどうか。何が流言飛語にあたるのか、まったく曖昧模糊としている。この点についてソフトバンクの孫正義氏が「充分な確証無しに『直ちには健康被害無し』も『危険だ』も、どちらも流言飛語になり得る。大丈夫と言われて被曝して『申し訳ありませんでした』と言われても取り返しがつかない」(4月8日のツイッター)と述べているのはまったく正しい。
原発事故後の政府の対応は明らかに後手後手で、情報公開も極めて不十分だった。そのことが人々の不安感を増幅させた。その政府・総務省に「流言飛語を削除せよ」と要請する資格はそもそもあるのか。