アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ

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<新連載>「ホリちゃんの眼」(スポーツ、芸能担当)第2回「プロボクシングの達人・井上尚弥研究」(2)

筆者・堀川嘉照(ほりかわ・よしてる)。1966年生。都立上野高等学校卒。16歳からボクシングを始め、19歳プロデビュー。20歳でソフトウェア会社設立。23歳で日本バンタム級ランキング入り。引退後、ボクシング興行を手掛ける。50歳よりジャーナリズムの世界へ。

1)に続き、WBA&IBF世界バンタム級チャンピオン・井上尚弥(大橋ジム)のスゴサの秘密に迫るーー。
井上の直近3試合のレコードは、マクドネル(イギリス)戦1分52秒、パヤノ(ドミニカ)戦1分10秒、ロドリゲス(プエルトリコ)戦4分19秒。たったこれだけの時間で、世界のバンタムウェイトトップ3をリングに沈めたのだ(KOタイム)。
その余りの強さ故に、試合後、「もっと試合を見たかった」、「早過ぎる」、「相手が弱過ぎる」などのファンの声も聞く。では、なぜ世界の強豪を相手にしても、井上は簡単にマットに沈められるのか。

剣道では「先の先」(せんのせん)、「対の先」(ついのせん)、「後の先」(ごのせん)という、いわば極意がある。
ボクシングも間合いで向かい合い対峙するので、この剣道の極意がボクシングにも当てはまる。
「先の先」とは、相手が打つ気配を感じ相手が打つ前に打つことをいう。「対の先」は、相手の動きを察知して相手より先に打つことをいう。そして「後の先」は、相手が打って来る時に打つことをいう。いわゆるカウンターパンチに当てはまる。
昨年10月、ワールドボクシングスーパーシリーズ(WBSS)1回戦で、横浜アリーナにおいて元WBAバンタム級スーパー王者ファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ)を1回70秒KOでマットに沈めた試合(冒頭写真)。
パヤノはアマで2度オリンピック出場し、プロでもKO負けなしの強豪だった。そのパヤノが試合後、「イノウエは速くてハードパンチだ。油断していたわけでなく、パンチが見えなかった」と振り返った。
 井上のスピード、パンチ力は想定以上。そして百戦錬磨の強者・パヤノさえ、一番緊張する探り合いの場面で「パンチが見えなかった」と振り返ったわけだ。
次にまだ記憶に鮮明に残る今年5月のWBSS準決勝のIBF王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)を2回1分19秒KOで葬った試合(横写真)でも、ロドリゲスに「イノウエのパンチは正直見えなかった」といわせた。
両雄揃って、井上の「パンチが見えなかった。」といったのだ。
これは偶然でも何でもなく、井上が「先の先」を粛々と実践したまでのことだろう。

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