一昨日の「毎日新聞」夕刊の「私だけの東京」という連載コーナーに、新宿タイガーさんが取り上げられていた。
新宿タイガーといってもわからないかも知れないが、タイガーマスクのお面を被り、体に虎のぬいぐるみなどをくくり付け、東京・新宿で自転車で40年以上、新聞配達をしているオジサンといえば思い当たる読者もいることだろう。
本紙・山岡がこの新宿タイガーさんを見たのは、20代のころ。かれこれ30年近くも前のことだ。『噂の真相』(休刊)の打ち合わせで、今はなき新宿駅中央口を出てすぐのところにあった談話室「滝沢」にいた時だったように記憶している。滝沢にも新聞を届けに来ていたからだ。
その時は山岡は別のところに住んでいたが、いまは自宅も事務所も新宿。しかも10年ほどから、新宿タイガーさんが勤めている「朝日新聞」の販売所からわずか数十Mのところにいる。だから、しょっちゅう会う。スーパーでもはち合わせし、新宿タイガーさんの素顔も良く知っている(お面を取っても、他はそのままの恰好で買い物しているから)。少し、漫画家の楳図かずお氏に似ている。
山岡はよく言えば誰でも受け入れる、悪くいれば玉石混交のこの新宿という街が今ではすっかり気に入っている。
その新宿タイガーさんを主人公にしたドキュメンタリー映画「新宿タイガー」が3月22日からテアトル新宿を皮切りに全国で公開予定という。監督はあの若松孝二氏(故人)のお弟子さんとのこと。必ず観に行こうと思う。
この記事で新宿タイガーさんは、最近は若い人に「キモい」といわれると。そして、この映画は自分を通じて、新宿という街を描いているのではないでしょうかと。
この映画が新宿の時代変遷も追っているなら、いまの日本同様、新宿もずいぶん均質化、寛容さが失われていることを暗に告発しているのか。
記事は新宿タイガーさんのこんな言葉で終えている。
「時代がどんなに変わっても、俺は変わらないでいたい。シネマと美女と夢とロマンを追及して、国家や権力とは無縁のまま生きたいと考えています」。本当にかっこいいと思う。