アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ

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<主張>安田好弘弁護士バッシングは正論か?

「7年間、裁判を傍聴してきたが、これほどの屈辱は初めて」??こんな遺族の怒りの会見の様子が、TV等で大々的に流れたのは今年3月14日のことだった。  この日、山口県光市で1999年4月に発生した母子殺人事件の上告審弁論が開廷されるはずだった。そのため、遺族や関係者ははるばる山口県から上京、最高裁法廷にやって来ていた。ところが、被告(犯行時は未成年。24歳。1・2審は無期懲役判決)の弁護人である安田好弘氏等2人の弁護士が欠席したため、開廷できなかった。  遺族の怒りはわからないわけではない。  だが、この間の事情をよく検討すると、批判されるのはむしろ裁判所側ではないのか。  今年3月始め、これまでの弁護人が辞任した。そのため、安田弁護士等が新たな弁護人になったのは3月6日。これに対し、上告審弁論は3月14日。  最高裁が弁論を行うということは、1・2審の判決を覆し、死刑判決の可能性もあるわけで、なおさら慎重に準備しなければならない。したがって、安田弁護士等が「準備期間が必要。しかもすでに当日は日弁連で研修用模擬裁判のリハーサルがあり出廷できない」として1カ月程度の延期を申し立てたのはむしろ当然である。ところが、最高裁はなぜか、これを却下した。  そして前日の13日午後にも、安田弁護士等は「出頭できない」旨、ファックスで伝えている。  だが、こうした事実は十分報道されることなく、冒頭のような遺族の会見、そして「欠席は裁判を遅らせるのが目的」との検察側言い分が大きく報道された。  最高裁が延期を認めなかったのは、昨年11月、「司法改革」の一環として裁判の迅速化が叫ばれ、公判前整理手続きが導入されるなどの流れがあるだろう。  迅速化できるなら、それにこしたことはない。だが、死刑や人生に大きな影響を及ぼすこともあり得る刑事事件の審理について一定の水準を保とうとすればある程度の労力がかかるし、かけなければならないだろう。安田弁護士はこの一連の流れを、「刑事事件は死んだ」と表現している。  さらに、延期を認めなかった背景には、担当裁判長が5月下旬に異動するため、その前に判決を出したいというご都合主義もあったようだ。  安田弁護士はオウム真理教の麻原彰晃被告の一審主任弁護人を務めるなど、人権派弁護士としても知られる。本誌・山岡も対武富士裁判(民事)で弁護人になってもらったが、事実を徹底して追及し、論理を立てるその厳密さ、真摯な態度には頭が下がる思いがした。著名なだけに弁護依頼は多く、帰宅するのは2週間に1度程度とのことだ。  ともかく、麻原被告の弁護でも、裁判が遅いとの世間の声が起きるなか、安田弁護士は弁護をしていた別件の住専絡みの不動産会社弁護の件で、資産隠しを指示したとして強制執行妨害罪に問われ約10カ月も拘置された。まだ結審はしていないが、03年12月の一審判決は無罪になっている。  関係者の間では、人権派の象徴的存在である安田弁護士を権力側としてはあわよくば逮捕、信頼失墜を以前から狙っていたから、との見方が挙がっている。また、この長期拘置により麻原被告の弁護人を降りざるを得なかった。  さらに、ここに来ての安田弁護士バッシング報道。例外的なのは、『東京新聞』(5月8日。「こちら特報部」)ぐらいだ。  繰り返すが、遺族の怒りの気持ちは察して余りある。だが、権力側がその気持ちをうまく利用して「裁判の迅速化」という甘い言葉に包んで「手抜き」裁判、「検察主導の大政翼賛化」(安田弁護士)を進めているとして、それに大手マスコミがそのまま乗っかっているとすれば、安田バッシングの評価は180度変わって来るだろう。  なお、前述の母子殺人事件の上告審弁論は4月18日に開かれ、この1回で結審。判決は6月20日に言い渡される(裁判長交代のため、別の裁判官が代読する)。…

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