警察の不祥事は枚挙に暇がない。しかもそれは、ほんの氷山の一角でしかない。 著者・小笠原淳氏は老舗の地方雑誌『北方ジャーナル』を中心に執筆しているフリー記者である。北方ジャーナルといえば、1979年、北海道知事選候補者についての記事が名誉毀損で訴えられ、表現の自由に関する判例ともなった事件で有名。 小笠原氏は、自転車で取材先を駆けずり回る精力的な記者だが、しかし、記者クラブに加入していないため、警察関係の取材には制限がある。そこで、情報公開制度を駆使し、北海道警察の本当の姿を明るみに出したのが本書だ。 本書によると、北海道では公務員の「懲戒処分」は全件公開が原則だが、警察職員だけは封印されることが多い、という。 2016年の年明け早々、著者は道警本部に懲戒処分一覧の開示請求をした。すると、「救護等の措置を講じることなく逃走」、つまりひき逃げをした巡査の記録が出てきた。しかも、ひき逃げにも関わらず、処分内容は「減給1ヶ月」とあまりにも軽い。 これは著者が文書開示請求をしなければ世間に知られることはなかった事実だが、これに限らず、同年、道警で22人の職員が懲戒処分を受けたものの、その半数以上が未発表だった。 それだけではない。懲戒処分に比べて「極めて軽微な規律違反」とみなされたケースは「監督上の措置」とされ、こちらはほとんど公表されないが、そのなかには法律に違反しているとしか思えない事例が続々と出てくるのだ。スピード違反、飲酒による暴行、万引き、賭博、異性へのストーカー・・・。身内に甘いと言われる警察だが、呆れ果てる。 こうした警察に自浄作用を期待してもムダであるからこそ、警察を監視するメディアの役割が重要なのだが、「警察の不祥事は記者クラブでは広報されない」という壁がある。著者はフリーであることによってその壁を越えている。 共謀罪施行の今こそ、多くの人に読んでもらいたい本だ。 (本体1500円+税。リーダーズノート出版)…