70歳近いいまも、まったく危険を省みず(拉致、脅しを受けたこと数知れず)、最前線で事件取材ばかりやられているフリージャーナリストの草分けと言っていい大先輩の草野洋氏が新刊を出された。 最近も、孫ほど若い全国紙社会部記者のなかには、亀井静香代議士疑惑、西武事件、不動産会社・セボンの問題などでお世話になった方も多いだろう。その事情通ぶりに加え、そもそも小説家指向だったとも聞く著者が、“事件小説集”を出したのだから、これ以上、生々しい作品はないのではないか。 大手広告代理店の権力抗争のなかで、高級官僚のワナにはまり、オーナー家が巻き返しを図る「黒い触手」。長崎沖に沈没した漁船の遺体引き上げをやらない船会社への復讐を描いた「沈没船」。アメリカ人宣教師が滋賀県近江で布教活動。経営したメンソレータムの醜態と復活を描いた「琵琶湖の十字架」。非嫡出子が成長して金権代議士となり、義妹を暴力団に襲わせる「赤絨毯のピエロ」の4作品。 発行は雷韻出版。2000円+税。…