●日経ファイナンシャル研究所が仕掛け、株価は約3倍に
ガス機器メーカー「ニッキ」(東証2部)の株価が、約500円から1500円以上まで急騰したのは04年4月から9月にかけてのことだった。その後、一気に急落し500円を割った。この急騰、急落ともこれという材料はなく、作られた相場だったことが窺える。
実際、この株価操作に深く関与していたのが「日経ファイナンシャル研究所」と名乗る詐欺師たちのグループだった。彼らは自分たちに資金運用を任せれば年利50%は固いなどと言って資産家等からカネを集めた。その資金の一部で、急騰の途中からニッキ株に臨んだ。同株式は時価総額が約62億円(05年11月末)と株価を操作しやすいのだ。
そして、その際、彼らは自分たちの痕跡を残さない、そして少ない資金で儲けるため、ダミーを使ったインターネットによる信用取引を選んだ。
●面接も携帯電話で話すだけ。相手は名義を借りた詐欺師
このニッキ株購入に当たり、彼らは5名のダミーを使っている。
もっとも、このダミー役は手数料をもらっていないし、信用取引の意味も分からず、知人の頼みと軽い気持ちで引き受けているようだから、ダミー役という表現は適切でないかも知れない。
そのうちの一人、A氏を例に見てみよう。
A氏は株取引の経験もなく、したがって、信用取引の意味さえよくわからなかった。
だが、詐欺師のメンバーの一人が、某有名ゴルフクラブのメンバー仲間だった縁で引き受ける。
先に総合取引口座申込みをしたが、そこに記された筆跡は、氏名欄も含め、すべて詐欺師が記したものだった。そして年収(3000万円未満)、金融資産(3000万円以上)欄のチェックもデタラメだった(実際は年収500万円以下、資産ゼロ)。