今年1月から、証券会社の口座を狙った不正アクセスと不正取引が急増。その最大の特徴は、単に顧客の口座に不正アクセスして株を売却するだけでなく、乗っ取られた口座が相場操縦を狙った不正な株取引に悪用さえされていることだろう。
こうした不正取引は累計今年5月までで5958件、取引金額は合計5000億円超にも上るという。
そして、乗っ取られた証券口座は証券会社16社に及び、大手・中堅・ネット証券を問わずで、各証券会社は対策に追われている。
そんな渦中の今年3月12日、「楽天証券」(楠雄治社長=冒頭写真)と顧客とのトラブルを巡る判決があり、東京高裁は、控訴していた顧客の主張を認め、一審判決を取り消し、審理を東京地裁に差し戻すとした。
現在、大きな社会問題になっている証券口座乗っ取り16社のなかに楽天証券もある。もっとも、その問題とこの判決内容とは直接の関係はない。しかしながら、審理差し戻しになったのは、そんなことさえやっていなかったのかと、誰もが驚くような基本中も基本の、ある行為だった。
楽天証券の管理体制の杜撰さを象徴する案件と言えなくもなく、そこで、この機会に報じることにした。
顧客(控訴人)は、楽天証券の口座で先物・オプション取引をしていた。
ところが、プットの売建により未決済損金が生じ、楽天証券がこれを立て替えたため、その立替金約226万円が清算未了となったことから、楽天証券がその顧客O氏に支払いを求めた、極めて単純な立替金等請求事件だ。
楽天証券は2023年8月、O氏を相手取り東京地裁に提訴。
同年10月に第1回口頭弁論期日があったが、顧客のO被告は出頭しなかったことから即、弁論終結となり、11月の第2回口頭弁論期日にO被告に請求額満額約226万円を支払えとの一審判決が出た。
ところが、この一審判決を不服として顧客O氏は控訴。
東京高裁はそのO氏の主張を認め、審理差し戻しになったのだ。
なぜ、そんなことになったのか?



