予備知識のない読者のために少し解説しておくと、安筆花さん(66歳。日本名・平島筆子さん)は脱北し、2003年1月、43年ぶりに日本に帰国した日本人妻。1959年12月、北朝鮮帰還事業で在日朝鮮人の夫と北朝鮮へ渡ったものの、約10年後、夫は当局に連行されて消息不明に。夫との間には2人の子供がいた。
ところが、やっとの思いで帰国したにも拘わらず、今年4月、安さんは、北朝鮮に残して来た長男の嫁が北朝鮮から出てくるから中国に行くと偽り日本を出国、北京で北朝鮮大使館に飛び込み、再び北朝鮮に戻ってしまった。
昨年春、息子が亡くなり、残されたもう一人の子供(長女)や孫のことを気にしていたとの報道もある。
それはともかく、安さんの脱北を巡っては、そもそも本人に明白な帰国意志がないにも拘わらず、脱北を仲介した人物が謝礼欲しさに「誘拐」したとの指摘が出て物議を醸した。だが、安さん自身が誘拐説を否定、問題は解決したはずだった。
掲げたのは、その安さんが北朝鮮に戻り、今年5月23日、帰国後、生活面などで支援していた平沢勝栄代議士宛に届いた手紙のコピーだ。
もちろん、安さんが、北朝鮮政府にとって都合のいい内容を書かされている可能性は否定できない。
だが、北朝鮮に戻った経緯といい、再び拉致されたわけではなく、子供や孫たちを人質に取られて脅迫され、ただそれだけが帰国の動機かといえばそれは違うだろう。