●神戸地裁尼崎支部で5月9日。問題の本は『アルゼ王国地獄への道』(鹿砦社) マスコミ業界においては辛口評価が多い中、しかし、『噂の真相』の後継誌を名乗る月刊誌『紙の爆弾』を創刊するなど、ジャーナリズムの基本である告発を体を賭けて行っていることから、本紙・山岡が寄稿する他、アルゼとの闘いに関してもその動向を本紙ですでに何度も伝えている出版社「鹿砦社」(本社・兵庫県西宮市。松岡利康社長)――その同社が出したジャスダック上場企業、パチスロ大手「アルゼ」の告発本、『アルゼ王国地獄への道』に対し、アルゼは出版禁止の仮処分を申し立てていたが、神戸地裁尼崎支部は5月9日、却下した。同社からそのことに関するファックス文書が届いたので、その「通信」を添付しておく。 出版禁止の仮処分といえば、最近では、田中真紀子元外相の長女に関する記事を巡り、『週刊文春』が申立されたことが記憶に新しいだろう。 ただし、同記事は、真紀子氏の権力犯罪を追及したものではなく、まさに長女のプライバシーに関する内容だったから、「報道の自由」という文藝春秋社の主張もどこかむなしく聞こえたものだ。 だが、文藝春秋社ほどメジャーではなくても、大企業や政治家などの権力犯罪を表面から告発する出版を行っており、それに対し、その内容は虚偽だとして、出版すること自体を裁判所命令で止めてくれというケースはけっこうあるのだ。 本紙・山岡自身も、過去、マルチ類似商法の「日本アムウェイ」を告発する本(あっぷる出版社)を出したところ、同処分を申し立てられたことがある(もちろん、却下。本訴の出版差止もされたが、向こうが途中で取り下げている)。 本紙・山岡はアルゼを過去に本格的に取材したことはなく、また、申立られた本を詳細に読んでもいない。だが、アルゼが問題多い企業であることは職業柄、確信が持てる。そうした相手を告発する有力な手段である出版という「言論の自由」を、丸ごと否定し得るこの申立自体、言論活動に対してはそぐわないものだと思っている。 一私人や、社会的影響力をもたない弱者を、公益性無く、また虚偽の事実を並べ立て、葬り去ろうという目的のために出版されたものなら、出版差止になって当然だし、その権利行使は支持する。 だが、仮にも出版社である以上、公益性なく、違法性の極めて高いものを出すとは思えない。仮にそういうことをしたら、そんな出版はいくら何でも社会が許さないから、その出版社は存続できないだろうし、出版後、名誉毀損による巨額の損害賠償請求訴訟を提起され、敗訴するはずだ。また、刑法には名誉毀損罪があり、それでも告訴され、それなりの刑事罰を受けるはずだ。したがって、論外のケースは別にして、出版後においても「言論の自由」に名を借りた名誉毀損行為には対処できると考える。 そういう意味から、今回のアルゼ告発本の差止が却下されたことは、至極、当然のことと思う。…