筆者・田沢竜次(フリーライター)。1953年東京生まれ。編集プロダクション勤務などを経て1983年からフリー。85年『月刊angle』連載を基に『東京グルメ通信・B級グルメの逆襲』(主婦と生活社)を書き下ろし、また文春文庫の「B級グルメ」シリーズでも活躍。B級グルメライターとして取材・執筆を続け今日にいたる。一方、大学の映画サークルで自主上映するほど映画にも精通。著書に「B級グルメ大当りガイド」「ニッポン映画戦後50年」など。
トランプ銃撃事件があって真っ先に思い浮かんだのは、何故か1970年の「瀬戸内シージャック」事件と、70年代に一世を風靡した「あのねのね」の二人組なのであった。一体どういう関連なんだ?
まずトランプ銃撃でいえば、スナイパーの20歳の若者は、警察の狙撃で即、射殺されている。この狙撃で射殺という事態は、あの時のシージャック事件に似ている。この事件は、1970年5月、瀬戸内遊覧の旅客船にライフルを持って乗り込み乗員・乗客を人質にした犯人の若者が、警察の狙撃犯のライフルで射殺された(搬送後に死亡)。その瞬間はニュースでも放映され、結構ショッキングな展開だった。この時はマスコミも世間も概ね納得。それでも国会では社会党の議員が「見せしめ」ではないかと追及。狙撃した警官も、顔も氏名も明らかになって警察を辞める羽目になった。
またこの年の春には、よど号ハイジャック事件もあり、シージャックという言い方もセンセーショナルな新語だった。この犯人は、その暴走ぶり(その前段にカーチェイスあり、ヘリも撃たれて墜落しかかったり、海保から海上自衛隊まで出動という大騒ぎになった)とまるで映画のラストシーンのような死に方といい、何かと話題になった。そして5年後に公開された、映画『冒険者たち』(監督・臼井高瀬)では、主演を務めた「あのねのね」の清水国明が、何と映画のラストでシージャックを敢行し、現実と同じように警察に射殺されたのだ。