筆者・田沢竜次(フリーライター)。1953年東京生まれ。編集プロダクション勤務などを経て1983年からフリー。85年『月刊angle』連載を基に『東京グルメ通信・B級グルメの逆襲』(主婦と生活社)を書き下ろし、また文春文庫の「B級グルメ」シリーズでも活躍。B級グルメライターとして取材・執筆を続け今日にいたる。一方、大学の映画サークルで自主上映するほど映画にも精通。著書に「B級グルメ大当りガイド」「ニッポン映画戦後50年」など。
こないだ本屋で立ち読みしていたら、あっと驚く新刊本に遭遇した。『復刻版 タレント帝国 芸能プロの内幕』(あけび書房)。著者は、あの竹中労(1928~1991)。何と56年ぶりの復刊だというのだ。
竹中労はルポライター、アナキスト、世界革命浪人、トップ屋、えんぴつ無頼、ケンカ竹中などと言われ、1960~80年代に活躍した怪人だ。キネマ旬報に「日本映画縦断」を連載し、五木寛之の『戒厳令の夜』映画化に奔走し、沖縄の「島唄」を発掘して初めて琉球歌のコンサートを実現させ、『女性自身』のライターから芸能界、山谷、韓国、アジアまで幅広く走り回り、平岡正明や太田竜と「三バカゲバリスタ」と呼ばれ、左翼から右翼まで付き合いも論争も数知れず、お騒がせ屋の海坊主オヤジだよ。ニュースのたびに「竹中労がいたらなあ」と思うことも多い。
特にジャニーズ問題は、もともと竹中労がナベプロをはじめ芸能界タブーも何のそので斬りまくっていただけに、今回の復刻版は有意義なことだ。こちとらも学生時代から竹中労の本はほとんど読んできたし、講演やシンポジウムなども何度か行ったことがある。あれは1989年頃だったか、「風の会」が主宰したシンポで、終了後の飲み会に参加して竹中労の隣に座ったことがあった。そのときの話題は宮崎勤事件だった。さすがの竹中労もどうにも理解できないとか珍しく困惑していたこと、意外にも結構気さくで人当たりの良いおっさんだったことを思い出す。