安倍晋三元首相の“負の遺産”が、安倍派の裏金問題など次々と明らかになるなか、本紙・山岡も出演する映画『妖怪の孫』がリバイバル上映されるというが、「紅麹問題」もその一つと言える。
「小林製薬」(4967。東証プライム。大阪市中央区)が製造した「紅麹」原料のサプリメントを摂取後に死亡したり、入院した者が多数出て大きな社会問題になっている件だ。
その報道のなかで、小林製薬の商品は健康食品(サプリメント)のなかでも「機能性食品」といい、効能を謳うのだが、安倍政権下の2015年4月、規制緩和の一環として導入されたことは、ここに来てさすがに大手マスコミも報じ出した。しかし、安倍首相(当時)との癒着疑惑があった森下竜一・大阪大学教授が、内閣府規制改革推進会議の前身である規制改革会議委員に2013年就任し、さらに健康医療戦略本部戦略参与として中心になり、導入を実現させたことまでは報じていない。
森下氏は、その導入目的を、「国民の健康増進に役立つ」としていたが、健康食品については、すでに1991年に「特定保険用食品」(トクホ)制度が導入され、効能を謳っていいようになっていた。だが、この認可を得るためには臨床試験が必要で、それには時間もかかれば、最低数千万円のコストもかかるところ、これでは中小企業からの発売は難しいため、その利権のために導入された側面が大きい。
すでに大手マスコミでも報じているように、トクホは、国が効能についても、安全性についても責任を持つ。だが、機能性食品は過去の関連する他社の論文などを流用し、ただ届け出れば効能を謳える。その代わり、いざ問題になっても国の責任は問われず、出した企業がすべて責任を持つことを条件に導入された。安全性の審査もしてない。
これのどこが国民の健康に役立つというのか?
有体にいえば、中小企業の利権のために導入された制度だった。