筆者・田沢竜次(フリーライター)。1953年東京生まれ。編集プロダクション勤務などを経て1983年からフリー。85年『月刊angle』連載を基に『東京グルメ通信・B級グルメの逆襲』(主婦と生活社)を書き下ろし、また文春文庫の「B級グルメ」シリーズでも活躍。B級グルメライターとして取材・執筆を続け今日にいたる。一方、大学の映画サークルで自主上映するほど映画にも精通。著書に「B級グルメ大当りガイド」「ニッポン映画戦後50年」など。
最近、東京駅の構内を歩いて感じたんだが、「グランスタ」とかいろんな飲食店のコーナーや売り場が増えて、全体的にグレードアップしている。おまけに東京駅自体が周りの丸ビルなども含めて観光スポットになっているらしい。
それで思い出したのは1987年、平凡社の月刊『QA』という雑誌の仕事で、「東京駅グルメロード」を企画提案して取材したことがあった。その頃の東京駅構内や周辺は、今と比較すれば全然地味で駅弁も10種類くらいだった。飲食処も簡易な食堂ばかりで、東京土産も「雷おこし」「花園饅頭」「鳩サブレ」なんて古典派が中心だったのだ
丸の内界隈で面白かったのは、戦前からの建物のままだった丸ビルだ。小津安二郎の映画で原節子が丸ビルのオフィスに勤めていたりして、丸ビルで働くってのがステータスだった時代の雰囲気が残っていた。1階と2階には昔ながらのシブイ洋食屋や喫茶店があって、歩いているだけでもワクワクする。驚いたのはトイレで、観光名所になりそうな重厚なつくりで、その頃、デパートやホテルなどのトイレ巡りなんて変な取材もやっていたこともあって、新発見に歓喜した。