筆者・田沢竜次(フリーライター)。1953年東京生まれ。編集プロダクション勤務などを経て1983年からフリー。85年『月刊angle』連載を基に『東京グルメ通信・B級グルメの逆襲』(主婦と生活社)を書き下ろし、また文春文庫の「B級グルメ」シリーズでも活躍。B級グルメライターとして取材・執筆を続け今日にいたる。一方、大学の映画サークルで自主上映するほど映画にも精通。著書に「B級グルメ大当りガイド」「ニッポン映画戦後50年」など。
自衛隊員の射殺事件のニュースで、加害者がかつて『丸』を愛読していたというのがあった。ミリタリー専門・戦記雑誌で歴史のある『丸』(潮書房光人新社)のことで、実はこちとらも小学6年~中学2年の頃、よく読んでいたのだ。
よく知らない人は、『丸』を戦争賛美とか右翼雑誌じゃないかとか誤解するけど、そういう色はほとんどなかった(その後はどうだか知らないけど)。『丸』は「日の丸」のことかと思っているかもしれないが、これは正確には英語の「Round」からきているという話だよ。
さて何で『丸』愛読少年だったかというと、戦記大好き、今でいうミリタリーオタクだったのさ。まあ自分の世代を前後して、1960年代に小中学生を送った男子のかなり多くがそうであったと思う。特に62~64年頃の少年雑誌は、表紙やグラビヤ、絵物語、マンガなど、第2次世界大戦・太平洋戦争ものは必須で、子どもながら日米英独の戦闘機、爆撃機、戦車、戦艦、空母の名称はほとんど言えたくらいだ。
それが多分東京オリンピックあたりから少なくなって、忍者、怪獣、宇宙・未来SF、スパイ(007とか)に焦点が移ってゆく。そっち方面の興味ももちろんあったが、まだまだ戦記ものに関心があった。そこで『丸』に出合ったわけさ。それも近所の古本屋で新刊の2割くらいの値段で売っていたので、買い漁っていたのだ。今から思いかえすと、『丸』の文章ってそれなりに格調高くて、読ませるものがあったんだ。