筆者・田沢竜次(フリーライター)。1953年東京生まれ。編集プロダクション勤務などを経て1983年からフリー。85年『月刊angle』連載を基に『東京グルメ通信・B級グルメの逆襲』(主婦と生活社)を書き下ろし、また文春文庫の「B級グルメ」シリーズでも活躍。B級グルメライターとして取材・執筆を続け今日にいたる。一方、大学の映画サークルで自主上映するほど映画にも精通。著書に「B級グルメ大当りガイド」「ニッポン映画戦後50年」など。
こないだ(7月12日)、村上春樹が声をかけて山下洋輔トリオが早稲田で53年ぶりのフリージャズ「再乱入ライブ」を行ったというのが記事になってたの読んで、そういえばと思い出した。
なんで「再乱入」かというと、1969年7月、バリケード封鎖中の早大で、学生たちが大隈講堂にあったピアノを持ち出して、ゲリラ的にライブを敢行したのだ。その頃、まだ20代だった山下洋輔らが、学生の要望に応えてはせ参じ、ピアノにひじ打ちとか、破天荒な演奏を展開したってわけだよ。
こちとら当時は高校1年生、家で田原総一朗がディレクターを担当した東京12チャンネルの『ドキュメンタリー青春』でその様子を観た記憶がある。タイトルは「バリケードの中のジャズ~ゲバ学生対猛烈ピアニスト」。この「ゲバ学生」とか、「猛烈」ってフレーズが、いかにもあの時代らしいね。ちなみに小川ローザの「オオッ!モーレツ」のCMもこの頃だ。
あらためてそのダイジェスト映像を観てみると、反戦連合と呼ばれていた黒ヘルの学生たちが隊列を組んで大隈講堂(ここも占拠されていた)からピアノを持ち出してどこかの教室で即席のライブを準備する。演奏が始まると、黒ヘルも一般学生も黙って聴き入っている。煽情的なタイトルの割には拍子抜けするような感じだ。