筆者・田沢竜次(フリーライター)。1953年東京生まれ。編集プロダクション勤務などを経て1983年からフリー。85年『月刊angle』連載を基に『東京グルメ通信・B級グルメの逆襲』(主婦と生活社)を書き下ろし、また文春文庫の「B級グルメ」シリーズでも活躍。B級グルメライターとして取材・執筆を続け今日にいたる。一方、大学の映画サークルで自主上映するほど映画にも精通。著書に「B級グルメ大当りガイド」「ニッポン映画戦後50年」など。
こないだ試写会で観た『東洋の魔女』(公開は12月11日から)は今年観た映画のなかでも、おすすめベスト10に入りそうだ。フランス人の監督(ジュリアン・ファロ)によるドキュメンタリー映画で、「東洋の魔女」とは、あの1964年東京オリンピックで金メダルをとった日本女子バレーチームのことだ。
中高年以上が東京オリンピックを語るときに必ず出てくるのが、後に自殺した円谷幸吉のマラソン(ゴール直前で抜かれて3位になった)とソ連チームを破って世界一になった女子バレーだ。こちとらも小学5年のときにテレビ中継を夢中になって観てたっけ。勝った瞬間の熱狂ぶりは、大相撲の千秋楽で横綱対決の大鵬と柏戸が全勝同士でぶつかり、珍しく柏戸が勝った瞬間(何というたとえだ!)に似ている。
それはともかく映画は、レギュラーだった彼女たち(70代後半から80代。キャプテンの河西昌枝は2013年に亡くなった)へのインタビューや今の日常も描いている。チームの名称が日紡貝塚というのは小学生でも知っていたが、正式には大日本紡績株式会社の貝塚工場の女工さんたちだったのだ。選手たちは、朝早くから工場で働いて、夕方から深夜まで練習する。