筆者・田沢竜次(フリーライター)。1953年東京生まれ。編集プロダクション勤務などを経て1983年からフリー。85年『月刊angle』連載を基に『東京グルメ通信・B級グルメの逆襲』(主婦と生活社)を書き下ろし、また文春文庫の「B級グルメ」シリーズでも活躍。B級グルメライターとして取材・執筆を続け今日にいたる。一方、大学の映画サークルで自主上映するほど映画にも精通。著書に「B級グルメ大当りガイド」「ニッポン映画戦後50年」など。
先日、朝日新聞の「ひと」欄ですごい人が紹介されていた。阪田良枝という82歳の女性で、かつて職人たちが労働しながら歌っていた「仕事唄」の研究を続け、特に地方によって異なる「紙すき唄」(右写真)、「酒造り唄」を50年もかけて探し歩き、600本ものテープにして、集めた200曲のデジタル公開を目指して、何と80歳で同志社大学大学院に入学(同じ年に孫娘も同大に入学!)、今年、修士論文を書き上げたというのだ。
「仕事唄」というのは、昔の日本映画や、NHKの「新日本紀行」のようなドキュメンタリーなんかで、聞いたことがある。たとえば「ソーラン節」だって、もともとはニシン漁の仕事唄だし、炭鉱とか国鉄にも仕事唄があった。それからメーデーなんかで歌われる労働歌(「がんばろう」とか「インターナショナル」もね)も、仕事唄から派性したようなもので、つらい仕事のなかで一緒に合唱することで、団結や連帯が育まれたってわけよ。
こちとらも若い頃は、デモの場でインターナショナルやワルシャワ労働歌なんてよく合唱したもんだが、そういえば最近のデモはほとんど歌わないし、そもそも老いも若きも合唱なんてやらないじゃん。あらためて考えると「仕事唄」でも「労働歌」でもいいから、もっと合唱すれば精神的にも良いと思うぞ。