筆者・田沢竜次(フリーライター)。1953年東京生まれ。編集プロダクション勤務などを経て1983年からフリー。85年『月刊angle』連載を基に『東京グルメ通信・B級グルメの逆襲』(主婦と生活社)を書き下ろし、また文春文庫の「B級グルメ」シリーズでも活躍。B級グルメライターとして取材・執筆を続け今日にいたる。一方、大学の映画サークルで自主上映するほど映画にも精通。著書に「B級グルメ大当りガイド」「ニッポン映画戦後50年」など。
朝日新聞の文化・文芸欄の「語る―人生の贈り物―」という連載コーナーで12月1日から登場しているのが古谷敏だ。知る人ぞ知るスーツアクターとしてウルトラマンに扮した俳優だよ。その古谷敏がウルトラマンに起用されるきっかけとなったのが『ウルトラQ』の一話「2020年の挑戦」で登場したケムール人のスーツアクターだったのだ。
お話はケムール人という宇宙人が年齢500歳という肉体の衰えを防ぐために若い地球人を誘拐し2020年の未来に送るというもので、毎回不条理でシュールな世界を描いていた『ウルトラQ』のなかでも個人的にはベスト3に入る傑作だったのだ。
斬新だったのはストーリーはもとよりケムール人の姿形で、怪獣やエイリアンによくあるパターンではなく、なかなかポップでサイケでハイセンスな感じで、12歳だったこちとらも「おおっ、やるじゃん」と翌日は教室内でも盛り上がった。面白いのは後のウルトラマンにも共通する体にぴったりしたスーツで、ゴワゴワした怪獣の着ぐるみとは全然違う。さらにパトカーに追われながらピョンピョン走る姿が妙にカッコよかった。
古谷敏はさらに『ウルトラQ』の一話「海底原人ラゴン」でラゴンという半魚人みたいな怪物に扮したが、これもケムール人に通じるピッタリスーツで、半魚人っぽくて印象に残った。朝日の連載によれば『ウルトラQ』の後番組となった『ウルトラマン』で、怪獣デザインを担当した円谷プロの美術総監督・成田亨から「ウルトラマンは君にしかできない」と強くプッシュされたというのだ。