先週の6月9日、株価が2175円まで爆騰し話題となったバイオベンチャー「テラ」(2191。JQ。東京都新宿区。継続前提疑義注記)。ところが6月12日発売の『フライデー』(6月26日号。冒頭写真)が新型コロナ治療薬開発は本当か? と報じたものだから一転株価はストップ安(下右写真=テラの株価チャート)。
これに対し、テラは13日に反論のIRを出したものの、「誤解を与えかねない記事」とやんわりした内容。開発が真実なら、フライデーに法的措置を取るベきだが、そんな文言はない。これでは疑惑を持たれて無理ないし、実際、同社を調べれば調べるほど疑惑が増して来るのだ。
話は変わるが、1990年代、エイズ薬が相場のテーマの一つだった。エイズワクチンに関するIRを出せば株価が急騰。今は新型コロナ関連を出せば急騰。歴史は繰り返す。1993年、当時、今のJQに上場していたソフト会社「テーエスデー」はタイでのエイズ薬臨床試験が上手くいっていることを、横浜市立大学医学部・奥田教授を利用し、信用させ株価を急騰させたが、「風説の流布」で告発され、同社は上場廃止となった。
タイでの臨床試験は嘘で、合弁事業も作り話。転換社債の償還が近づいており、償還を回避するために株価の吊り上げを画策。1992年6月、日経が「臨床試験が近くタイで始まる」と報じると、テーエスデーの株価は900円台から7月には3000円に急騰。その後調整も9月8日には3650円まで上昇。そして12月8日に「風説の流布」で上場廃止となったのだった(代表取締役は同容疑で懲役1年4月、執行猶予3年)。
テラが同じとは断じていわない。いえば、筆者が逆に風説の流布に問われかねない。しかし、かつてこのような事件があったということだ。