
老人に振り返るほどの日々などはないが、貧困が身に滲みた年ではあった。最初にその辺りを少し書く。何の役にも立たない極私的雑感である。「たずきの方便」ともいう老人の下らない私念である。

本心ではもう生存などしたくない社会的に落伍した「生存不適格老人」にも国と自治体は「生活保障法」に拠る扶助を惜しまない。権利とはいえ多分、感謝しなくてはいけないのだろう。

死んでこの身が消滅するまではこの世に生存する、というのは散文的な現実である。身も蓋もない恐ろしいまでの真実である。
〈過去は水に流すまでもなく既に刹那的に消え失せている。世界は刹那滅的なのである〉