大阪市阿倍野区の聖天山に建つ「正圓寺」(同名宗教法人が経営。辻見覚彦理事長)は開基939年。日本最大の木彫の大聖歓喜双身天王(聖天)を本尊とする真言宗単立の寺院。通称「天下茶屋の聖天さん」と呼ばれ、地元ではよく知られている。
そのお寺が事件屋に乗っ取られたとして、同宗教法人は最寄りの大阪府警阿倍野署に詐欺罪で告訴し、すでに今年1月29日に告訴状は受理されているという。
本紙が入手した告訴状などによれば、事の起こりは、社会福祉法人「天下茶屋聖天福祉会」(そもそもの理事長は正圓寺と同じ辻見氏)が正圓寺の約3000坪もある敷地の一部に特別養護老人ホームの建設をしようとしたこと。
2018年3月に工事着工したものの(下右写真)、資金難に陥り、同年11月には工事代金不払いで工事停止。その窮状のなか、登場したのが被告訴人の2人、3法人の事件屋グループだったという。
まず、融資を受けるためだと聖天福祉会の代表者を事件屋仲間に変更させられる。そして、翌19年2月、工事会社に預金口座を仮差押されるや、このままではお寺の土地も本体も工事会社に取られてしまうなどと、当時、C型肝炎の治療中でなおさら精神的余裕がなかった辻見氏の不安を煽り、差押え回避のためにかたちだけ名義書き換えするだけなどと述べ、辻見氏に多量の書類に署名・捺印させ、結果、約3000坪のお寺の土地はすべて被告人側の手に渡ったという。
したがって、この名義変更につき、お寺側はまったく売却代金をもらっていないし、売買契約書も交付されていないという。
本紙がこの乗っ取り事件に興味を引かれたのは、この件を主導したと告訴状で名指しされている被告訴人K氏を、本紙は過去、取材したことがあるからだ。
本紙がこのK氏を取材したのは「スーパー玉出」絡みで。
スーパー玉出といえば、大阪の地元では激安スーパーとして知られたものの、18年7月、そのスーパー部門は売却。そして、創業者で長年社長を務めた前田託次氏は同年12月、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益収受)で逮捕されたのは本紙でも既報の通り(罰金30万円の有罪に)。
本紙がK氏を取材したのはそれより前の13年ごろ。
スーパー玉出の前田氏の信任を得、同グループの余剰資金を扱い、不動産買収や病院乗っ取りなどで他の事件屋と暗躍していると聞いてのことだった。