筆者・平地治美(薬剤師。鍼灸師)。漢方の良さを伝えるため、日々の臨床では治療だけではなく自然治癒力を高めるための“養生”の指導に特に力を入れ、一般の人たちへの健康指導を積極的に行う。朝日カルチャーセンター新宿、津田沼カルチャーセンター等で「女性のための漢方レッスン」「舌診入門」「季節の過ごし方と食養生」などの漢方関連の講座を担当。和光治療院・漢方薬局(千葉市若葉区TEL043-232-6258)で治療。千葉大学医学部医学院和漢診療学講座非常勤講師。京都大学伝統医療文化研究班員。日本伝統鍼灸学会理事。漢方三考塾講師。著書に『げきポカ』(ダイヤモンド社)、『舌を見る、動かす、食べるで健康になる』(日貿出版)。「平地治美の漢方ブログ」発信中。
秋~冬の養生の原則は「秋冬養陰」といい、体に必要な栄養をしっかり蓄えて温存することが重要な季節です。
この原則をしっかりと守る養生法により、冬のあいだに気・血・津液(体内に存在する正常な水分のこと)を蓄えておくことによって、一年のスタートである春を元気に迎えることができるのです。
秋冬養陰の「陰」とは、血と水のことを指します。
特に冬に重要なのは「補血(ほけつ)」、つまり血を補うことです。補うといっても輸血ではなく、自分で作り出すことであり、その材料になるのは食べものです。
補血する働きのある食材には以下のようなものがあります。
【補血の働きのある食材】
当帰 クコ 松の実 ぶどう ライチ ごま なつめ きくらげ キャベツ ホウレンソウ にんじん あなご いか うなぎ 牡蠣 たちうお すっぽん 牛肉 牛乳 鳥肉 卵 豚肉 羊肉 レバー。
今回はこれらの食材のうち、今が旬の牡蠣を取り上げてみましょう。
牡蠣は「海のミルク」とも呼ばれ栄養価の高い食材です。
補血の働きが強く、イライラや不安感を解消する食材とされています。血を造るのに必要な亜鉛、鉄、ビタミンB12、銅、肝機能を高めるタウリンが豊富で、補血を助ける大きな効果がある食材です。また、ビタミンB12には、脳の働きや精神を安定させる効果もあります。