■プロフィール 投資歴18年、出版社勤務の兼業投資家。投資に必要なのは、1に「メンタル」、2に「需給」、3に「ファンダ」だと考えており、勝ってもおごることなくたえず反省を繰り返し、安定して資産を増やす投資を心がけている。
≪先週の相場振り返りと今週の見通し≫
先週末の日経平均株価の終値は23,827円と、先週比-214円(前稿比+190円⇒ +194→ ▲160→ ▲206→ +669※12月2週目)の下落に転じた。その後の日経平均先物も、中国・武漢で発生したコロナウイルス(新型肺炎)の世界への感染拡大を受けて大いに動揺し、23,632円と、夜間だけで-200円もの急落である。※一時23,550円の安値もあった。
NYダウ市場は、週間で-358ドル安(※前稿+524ドル⇒ +189ドル→ ▲10→ +320→ +120)の、28,990ドルと下落して引けている。しかし前稿に引き続き、NYダウやS&P株価指数に比べ、日本株の下落幅は大きい。もちろんリスク回避の円高(109.29)が作用していようが、イヤな気分にさせられる。
さて、今週のストラテジーだが、残念ながら?売り?で間違いなさそう。そもそも海外勢は、12月最終週から3週連続の売り越しを続けており、この展開は濡れ手に粟だと思っているだろう。
週末金曜日の米国市場をみても、債権が買われて金利低下となり、銅を中心とするコモデティ価格が分かりやすく軟調だった。これは、誰がみてもリスクオフのサインである。加えて、24日(金)夜間の先物取引をみると、TOPIXのほうの売買代金が少ない。よってこの市場に十分なリスクヘッジができているとは思えず、週明けに売り物がでそうだ。また、NYダウなどは、明らかに出来高を膨らませてリスクオフとなっている。
日経平均株価指数に関しては、昨年10月からの上昇が急ピッチな上に、ここにきて重要な支持ラインである25日線(23,823円)を下回ってきた。ここからの支持線は75日線が23,197円であるため、一時的にも23,200円どころを試す展開が考えられるだろう。
ここまで筆者が悲観的になっているのは、中国新型肺炎(コロナウイルス)の感染者拡大のペースが加速度を増しているから。現在の報道では(26日PM1時頃)、世界中で2000人超の罹患者、死者56人となっているのだが、昨日は1300人程度だったはずだ。パンデミックの兆候と思わざるをえない。
これを2002年11月に発生したSARS(サーズ)と比較してみる。この流行り病は2003年中ごろまでに蔓延し、致死率約10%で775人の死者がでた、と記されている。株価に関しては、当時の日本は民主党政権で、暗い経済見通しが蔓延するなか、日経平均株価は8631円→ 7604円と5ヵ月程度で12%程度の下落で大底を打った。この間、NYダウは、8367ドル→ 7417ドルと同様の推移だ。
2003年当時に比べれば、安倍首相が推進するインバウンド政策が奏功した結果、現在のほうが中国の影響を受けやすいのは確実。中国では春節にもかかわらず団体旅行も個人旅行も停止となり、日本のインバウンド関連企業の株は厳しい調整を余儀なくされそうだ。主にはドラッグストア、ホテル、百貨店などが憂き目にあう。
ただ、通常のインフルエンザであっても、毎年日本で1000万人の罹患者があり、これを直接の原因とした死者数は1万人程度(※直接原因で約1000人)だという。そもそも肺炎自体の致死率は5%~9%程度。現在の中国、新型肺炎(コロナウイルス)は、感染力は高く脅威ではあるものの、致死率は現在3%程度と、いまのところは中国の経済活動(GDP)に影響するほどのものでないと考えてよいだろう。ただ、ここからこのウイルスがどう変異し(※潜伏期間中にもヒトに感染する)、また死者数が増えていく可能性は十分あり、市場は、すっかり下げムードとなっていることを鑑みると、少なくとも今週はこの流れに逆らうことは間違い、だと考えている。また、すでに感染規模はSARSの10倍と言う香港の専門家の記事も出回っており、情報は錯そうしている。
また、今週は日米ともに決算発表の序盤の山場となる(※イベント欄に後述)。先週は、「日本電産」(6594)が、決算を終えた金曜日に-2.4%もの下落となった。永守会長が、「中国市況は大底を打った」と言っているにもかかわらず、市場が下げたことに悪地合い振りが伺える。マザーズにしても、この低位置からさらに下げたことには違和感を覚えた。
今週中に中国の新型肺炎が、明確に下火になることは考えづらいため、今週は各々リスクヘッジポジションを積んで、下落に耐える1週間となりそうだ。