■プロフィール 投資歴18年、出版社勤務の兼業投資家。投資に必要なのは、1に「メンタル」、2に「需給」、3に「ファンダ」だと考えており、勝ってもおごることなくたえず反省を繰り返し、安定して資産を増やす投資を心がけている。
≪先週の相場振り返りと今週の見通し≫
大納会の日経平均株価の終値は23,657円と、先週比-160円安(前稿▲206⇒ +669※12月2週目)の下落となった。そしてその後、正月休みとなった日本市場をしり目に、海外市場は開いており、日経平均CFDは23,311円。年明けは-350円もの初売りスタートとなりそうだ。ちなみに先週、NYダウは週間で-10ドル安(※前稿では+320⇒ +120)の28,635ドルで引けている。極端にリスクオフなのは日本市場などの弱小国だけ。
このリスクオフの流れは、1月3日、イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官(冒頭写真)が、米軍によりバグダッドで殺害されたことから始まった。ソレイマニ司令官はイランの最高指導者ハメネイ師に次いでNo.2と目される要人で、次の最高指導者候補と目された人物だ。これを受けて、ハメネイ師は3日間の服喪期間を設けると明らかにし、「偉大な司令官の血で染まった手を持つ犯罪者たちは厳しい報復を受けることになる」と声明を発表。イランのロハニ大統領も、「米国の恐ろしい犯罪に、イランは疑いなく反撃する」と声明をだした。
このソレイマニ司令官だが、イラン国民にとっても過激派組織IS、アルカイダなどのテロ組織から守ってきた英雄として非常に尊敬されてきた人物。それをアメリカが殺害したとなっては、どう考えても悪感情はMAXとなっているだろう。
そもそも米国・トランプ大統領は、スレイマニ司令官が率いるイラン革命防衛隊コッズ部隊をテロ組織団体だと認定しており、大統領選挙をにらんで支持母体であるキリスト教福音派とユダヤ教徒にいい顔がしたいがために隙あらば殺害しようとしていた節がある。それがたまたま1月3日だった、というわけだ。
ただ、その代償は大きい。この問題がより深刻さを増しているのは、中ロ勢がイラン支持を鮮明としていることだ。
米国側としても防衛策を発表し、在イラク米国大使館は、「米国市民は、可能であるならば飛行機でイラクを出国しなければならない」、あるいは陸路で他の国に向かわなければならない」、との非常事態声明を発表している。
そしてこのイランの英雄、スレイマニ司令官の葬儀は5日に執り行われた。前述した「3日間の喪」が明けるのは、1月6日(月)の日本時間からだと考えるのが適当だろう。トランプ大統領は、イランが報復すれば重要拠点52カ所に反撃数する、と脅している。よって日本の個人投資家は週明けから、リスクヘッジポジションをしっかりと構築する必要に迫られている。
しかし、1月2日(木)からの米国市場は、トランプ米大統領が、「1月15日に中国との第1段階の貿易合意に署名する」と再度表明したことで、米中貿易摩擦の解消から株価は強含んでいた。加えて中国でも、元旦に預金準備率の引き下げの景気対策を打ち出しており、本来ならば休み明けが楽しみだったことも忘れてはならない。
ひとつ心配なのは、中国側からは1月15日の日程についてはなんの発表もないこと。しかしトランプ大統領は「署名式はホワイトハウスで行う」と12月31日にツイート。貿易交渉の第2段階に入る際は北京に訪問するとも述べていた。このイラン問題さえ起らなければ、と思うとたいへん残念に思えてならない。
よって年明け1発目のストラテジーとしては、イラン問題を注視して、まずはイランの報復を待って、その後の米国の再報復を確認してからでないと動けない。筆者は、週明け早々には日経平均の先物を売ってVIX指数を買い資産防衛に努めるつもりだ。リスクオフとなれば、日経平均の75日線である22,800円程度まで下落することがあっても驚かない。NYダウの12月SQ値は28,455ドルだったため、これを下回ると25日線である28,209ドルも視界に入ってくる。