アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ

内部・外部告発、情報求む!

(弁護士などのプロが調査。ただし、公益性あるケースに限る)

書評「『本当のこと』を伝えない日本の新聞」(マーティン・ファクラー著。双葉新書。800円+税。7月6日発売)

 書名でいう「本当のこと」とは何か? そのひとつは、福島第一事故直後に、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)による放射能拡散予測を政府が意図的に公表せず、その結果、付近の避難者が余計な被曝を強いられたこと。その事実を大手メディアは掴んでいたにも関わらず、だいぶ後になるまで報道しなかった。 なぜか? それは著者が鋭く指摘するように、大手メディアは記者クラブ制度に寄りかかり、「原子力ムラ」と癒着していたからだ。 アメリカ人ジャーナリストの著者は、ニューヨークタイムス記者として長年日本に滞在し、3.11報道によってピュリッツアー賞国際報道部門ファイナリスト(次点)に選出された。日本語が堪能で、日本社会を深く理解しているジャーナリストだ。 その彼から見た大手メディアの現状と言えば・・・フリーを締め出す排他的な記者クラブ、「企業広告掲示板」とも揶揄される大企業ベッタリの大新聞、サラリーマン(正社員)中心の歪んだ雇用構造など、著者ならではの鋭い指摘が見られる。 とはいえ日本通の著者のスタンスは、「日本が好きだからこそ」の批判。最終章「日本の新聞 生き残りの道」で、記者クラブ型メディアの時代は終わりを告げるとともに、クオリティの高い新聞が再生するという展望を語っている。 なお、アメリカでは、権力に近づきすぎたジャーナリズムのことを「アクセス・ジャーナリズム」と呼ぶのだそうだ。9.11事件からイラク戦争に至るまで、多くのメディアが体制翼賛的な記事を執筆したことが反省されている。本紙アクセスジャーナルと紛らわしい呼び名だが、その姿勢は対極であることは読者の方々にはわかってもらえるはずである。…

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