本書のことは昨年末に一度、批判的に取り上げた。
もっとも、筆者は自身の検事時代に潰れた事件につき、その裏舞台を暴露するなど、何しろ、生身の証言盛り沢山(多くの疑惑政治家の実名が出ている)だけに迫力が違うし、たいへん参考になるのは紛れもない事実だ。
偶然かどうかはともかく、潰れた「三菱重工CB事件」も、いま防衛省の闇の一角に捜査のメスが入られようとしているだけになおさら興味深い。
本書によれば、1986年9月、わが国最大の軍需企業=三菱重工は1000億円のCBを発行。その一部、約100億円が総会屋に利益供与され、さらにそこから中曽根康弘元総理など約20名の政治家に流れた可能性があるという。
だが、“国策企業”故、身内からの捜査妨害でこの件は潰された。その際、転換社債と利益供与の関係につき、三菱重工側を擁護する論文を書いたのが、当時、東京地検特捜部長から最高検検事に異動していた河上和雄弁護士(現在)だという。