本紙既報のように、iPS細胞をすでに患者に移植、成功したという虚偽発言した森口尚史氏(冒頭写真)の登場で危機感を抱いた被害者遺族が、新たな被害者を出さないためにと、基本的には同じ原理のES細胞移植名目で騙取されたとする実父A氏(享年83)のケースを告白してくれた。
糖尿病で腎臓が弱り、人工透析を受けていたA氏はHPを見て「N社」(東京都港区)に接触する。
N社から「ES細胞移植は中国においては、最先端の米国に比べてもはるかに多くの臨床例があり、糖尿病患者だけでもすでに2000件を超える。外国人でも問題なく受けられる」との説明を聞かされ、昨年6月、中国・吉林省の病院に旅立つ。
現地空港には2人の通訳が出迎え、車で病院へ。
その当日、血液検査を受ける。増殖が可能な体質かの検査だったと思われるが、大丈夫だったようだ。そして、何と翌日にはもう増殖したとされる腎臓細胞の移植が行われたという。しかも、それは腎臓患部への注入ではなく、何と点滴によるものだったという。
「その上、父は心臓も弱っていたんですが、心臓のES細胞も増殖できたということで、同じ日、腎臓と心臓用の点滴をそれぞれ1時間かけ各2本、計4時間受けています。その間、治療についての説明はまったくなく、ただ点滴後、“半年後には効果を実感するだろう”と言われただけのようです。
確かに、こんな話を聞いたら“騙される方も騙される方”と思われるかも知れない。私だって、そう思います。ですが、藁にも縋りたい患者の立場にも思いを馳せていただきたい。何しろ、儲け話の詐欺話と違って命に関わることなんですから」