事件は今年9月9日に起きた。
ある会社役員のA氏は、同日午後0時10分ごろ東京都中央区日本橋茅場町1丁目のヤマゲン証券本社に出向いた。
知り合いのB氏の紹介で、「エス・サイエンス」(5721。東証1部)の株式30万株を買うためだ。当時、エスサイエンスの株価は40円ほどだったが31円でいいという話が来た。31円で30万株買うには930万円いるが、時価通りの40円で売れたら1200万円。うまくいけば、1週間ほどで税金を引いても200万円以上の利益が出るということでその話に飛びついた結果だ。
6階の本社に入ると、ヤマゲン証券オーナー(名刺では顧問の肩書き)の荒木武氏が対応。奥にある応接室に通される。
その場に集まったのはA氏、荒木氏、それにエス・サイエンス株所有者の夫という松村賢吾氏、それに「G.サイエンス」(東京都中央区)という会社取締役を名乗る高橋健治氏。
要するに、肝心の売り手という松村氏の妻は来てなかった。
しかし、松村氏はこう語ったという。
「名義は妻ですが、実際は私の株で、契約書には妻のサインも印鑑も先に押してあります。それに、ここにいる荒木氏はヤマゲン証券の影のオーナーで、私とは古い付き合いです」。
さらに松村氏、同席した高橋氏について、
「高橋氏は私の仕事仲間。私は高橋氏に借りがあり、その借りを返す意味もあり、今回、市場より安く売ることにしたんです」。