本紙で4度に渡り報じて来たこの疑惑、詳細は過去記事をご覧いただきたいが、ひさしぶりの追加報告なので、改めて、ごく簡単に振り返っておく。
深刻な土壌汚染が発覚したにも拘わらず、石原慎太郎東京都知事が強行している“都民の台所”を預かる築地市場の豊洲への移転計画――大手マスコミの報道を見ていると、もはや決定のようにも思えるが、決してそんなことはない。というのは、築地市場では5主要団体組合員が働いているが、そのなかで最大でもっとも力を持っているのが「東京魚市場卸協同組合(東卸)」だ。そして、この東卸だけが未だ豊洲移転にOKを出していない。
来る1月28日、その東卸の理事選が行われる(そこで選ばれた理事から後日、理事長が選ばれる)。そこで賛成派が多数を取れば、東卸もOKを出すことになるが、これまでは賛成、反対がほぼ互角だった。
だが、1月28日の理事選では賛成派が多数を取るとの見方もある。というのは、この間、理事長と常任理事のトップ計6名が長年の懸案であった東卸の巨額債務問題を解決したとされるからだ。
東卸は一部組合員に貸し付けた事業資金が焦げ付き、09年2月末段階で資産約23億円、負債約35億円で、約12億円の債務超過だったとされる。
ところが、理事長らが奔走し、特定調停の結果、銀行への債務約17億円を免除してもらい、借金が無くなったという。
しかし、その直後、不可解な事実が発覚した。
この借金整理のための約13億円の支払いの一部は、組合員への貸付債権約26億円を「マーケットプランニング」なる会社に1億5000万円で譲渡することで工面した。ところが、驚くなかれ、そのマーケット社の株主は前出の東卸の伊藤宏之理事長以下5名の常任理事だったのだ。
しかも、この1億5000万円という譲渡価格は破格の安値だった可能性があり、だとしたら、回収で1億5000万円の元を取るだけでなく、多大な利益が伊藤理事長以下6名の理事の懐に入ることになる。要するに、東卸トップら懐柔のための“アメ”ではないかという疑惑だ。
もっとも、伊藤理事長らはこうした疑惑を招かないため、当時、それなりの言い訳をしていた。
その一つは、マーケット社の資金回収が債権買い取り価格の1億5000万円を超えたら、「私たち出資者は一切その利益に関与する気は全くございませんので、確認の意味が必要であればですね、その旨の念書を入れることもやぶさかではないと」(昨年6月7日の東卸理事会の席での伊藤理事長の発言。「議事録」より)というものだった。