アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ

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今通常国会に提出された「テロ資金提供処罰法」改正案――知られざるその危険性

 安倍内閣は去る3月15日、「公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律」(通称「テロ資金提供処罰法」)の改正案を今通常国会に提出した。この法律が成立したのは2002年のこと。前年2001年に発生した9.11同時多発テロを受け、テロリズムへの資金提供を防止するための国際条約が生まれたが、その条約を批准するためにできたのが同法律だ。
“テロを防止するための法律”とあって、成立時も今回の改正でも、反対ないし批判的な意見は聞こえてこない。それどころか、審議事実さえほとんど報道されていない。
ところが今回の改正案を詳しく読むと、重大な問題点が浮かび上がる。言うまでもなく、「テロをなくすためならどんな法律でも許される」わけではないのだ。
5月10日、弁護士会館(東京都千代田区)で、「破防法・組対法に反対する共同行動」が学習会を開いたが、同団体は「テロ資金提供処罰法」を「カンパ禁止法」と呼び、反対運動を開始している(冒頭写真は同団体による4月18日の国会前抗議行動)。
 講師の足立昌勝氏(関東学院大学法学部教授。左写真)は、改正案の問題点をふたつ、指摘した。「ひとつは、『テロリスト』への提供を禁止する『資金』を、『資金若しくはその実行に資するその他の利益(資金以外の土地、建物、物品、役務その他の利益を言う)』と大幅に対象を広げているが、その定義が非常に不明確であること」。
さらには、処罰される対象は「テロ企図者」だけでなく、「一時協力者、二次協力者、その他協力者」と拡大し、「懲役10年以下もしくは罰金1000万円以下」(一時協力者の場合)の処罰を受けることが付け加わっている。「この『その他協力者』は永遠に続き、際限がない」(足立氏)という。

そもそも国際法上、テロリズムについての明確な定義はなく、同法は「テロを実行しようとする者」を未然に取り締まる法律であることから、02年の制定時から懸念の声がなかったわけではない。例えば日本弁護士連合会は会長声明で、「南アフリカのアパルトヘイトに反対する活動や、東チモールの独立などを支援する国内の団体に資金カンパをするような行為すら、犯罪行為として処罰の対象とされる可能性があり、市民の表現の自由や結社の自由を侵害する危険がある」と反対していた。
改正案では処罰の対象者が拡大するとともに、資金だけでなく物品・役務まで取締りの対象になる。中東・パレスチナのガザ地区を実効支配しているハマスは、米国やイスラエルからテロ組織規定されているが、読者のあなたが、ガザに救援物資を送ったら「その他協力者」として取締当局に逮捕されることも、まったくありえないことではないのだ。
「今国会期中に同法案が成立するかどうかは、法務委員会で公職選挙法をめぐって与野党が争っているからいま、微妙だ。一方、共謀罪は民主党前政権で成立しなかったが、自民党に戻った今、再び上程するのは間違いない。秘密保全法への動きもにらんで、抗議行動を続けていく」と破防法・組対法に反対する共同行動のメンバーは語っている。
本紙も言論・表現の自由の侵害に反対する立場から、一連の法案の動きを追っていくつもりだ。
カテゴリ: 報道・マスコミ : 共謀罪
安倍内閣は去る3月15日、「公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律」(通称「テロ資金提供処罰法」)の改正案を今通常国会に提出した。この法律が成立したのは2002年のこと。前年2001年に発生した9.11同時多発テロを受け、テロリズムへの資金提供を防止するための国際条約が生まれたが、その条約を批准するためにできたのが同法律だ。
“テロを防止するための法律”とあって、成立時も今回の改正でも、反対ないし批判的な意見は聞こえてこない。それどころか、審議事実さえほとんど報道されていない。
ところが今回の改正案を詳しく読むと、重大な問題点が浮かび上がる。言うまでもなく、「テロをなくすためならどんな法律でも許される」わけではないのだ。
5月10日、弁護士会館(東京都千代田区)で、「破防法・組対法に反対する共同行動」が学習会を開いたが、同団体は「テロ資金提供処罰法」を「カンパ禁止法」と呼び、反対運動を開始している(冒頭写真は同団体による4月18日の国会前抗議行動)。
講師の足立昌勝氏(関東学院大学法学部教授。左写真)は、改正案の問題点をふたつ、指摘した。「ひとつは、『テロリスト』への提供を禁止する『資金』を、『資金若しくはその実行に資するその他の利益(資金以外の土地、建物、物品、役務その他の利益を言う)』と大幅に対象を広げているが、その定義が非常に不明確であること」。
さらには、処罰される対象は「テロ企図者」だけでなく、「一時協力者、二次協力者、その他協力者」と拡大し、「懲役10年以下もしくは罰金1000万円以下」(一時協力者の場合)の処罰を受けることが付け加わっている。「この『その他協力者』は永遠に続き、際限がない」(足立氏)という。

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