今年3月18日、東京地裁に注目すべき詐欺話に関する民事訴訟が提起された。
原告は9名。
この9名、高級腕時計を購入してくれれば、それを中国人富裕層にルートを持つ転売のプロが中国現地に飛び購入価格の2から4割増しで売るからその利益を折半しようという儲け話につき、「博報堂」出身で「電通」役員とも懇意という被告から直接ないし間接的に勧誘され引き受けた。この数年のことだ。
彼ら会社社長、役員、個人事業者などを務めるほぼ40代の者がこの話に乗ったのは、ノーリスクという説明もあってのことだった。
というのは、(1)購入時の頭金はこの話を勧誘した側が出し、(2)購入する時計販売店(東京都渋谷区)は決まっており、そこは信販会社と強い繋がりがあり所得証明不用、しかもローンの支払い開始は半年ないし1年後でいい、(3)その間に転売のプロが中国人に売る、(4)購入する高級腕時計メーカーの正規販売店は中国にないし、購入する時計販売店は独自ルートで格安で販売しており、かつ購入してもらうのはレアモノだけだから必ず売れる、(5)万一、売れない場合はローン支払いを勧誘側で負担する(「覚書」も)と聞いたからだ。
しかし、結果は、原告9名に総額4億円近い負債が残っただけだった。
何しろ、高級腕時計の価格は1つで3000万円(オーデマ・ピゲ=冒頭左写真)、1100万円(パテック・フィリップ=冒頭右写真)とかするのだ(計61個。写真は購入分とは別のもの)。
そしてこれら超高級腕時計は購入時、原告ではなく、転売する側がそのまま持ち去り、いまでは連絡も取れない。時計は行方不明なのだ。
この詐欺話、本紙が興味を持ったまず1つは複数の大手信販会社の審査を通っている事実。