本紙はこの間、タイ投資ファンド「アジア・パートナーシップ・ファンド(APF)」(本社=タイ・バンコク。此下益司会長=冒頭右写真)を徹底追及しているが、このAPFの傘下に入り、APFに資産を収奪されている疑惑のある東証2部のゴム老舗企業「昭和ホールディングス」(千葉県柏市)の労働組合が申し立てている件で、昨日、東京都労働委員会(都労委)において、昭和HDの重田衛社長ら経営陣に対する組合委員長の尋問があった。
ハプニングは、組合委員長に対する反対尋問のなかで起きた。
この席に、APFの此下会長の実弟である昭和HDの此下竜矢CEO(=冒頭左写真)も来ており、尋問当事者でないにも拘わらず、組合委員長に反対尋問を始めたのだ。
此下CEO「組合は、(昭和HDの)資金が此下兄の、まあ私かも知れないが、APFに還流している。それが背任だという主張なんですか?」
委員長「はい」
これに対し、此下CEOがどう反論するか見物だったのだが、何もなし。
脈略のない同趣旨の質問に、都労委の公益委員から、「証拠が(組合側から)いろいろ出ているので、それを示して具体的に質問を」と注意される有様だった。
本紙でも既報のように、10年6月、金融庁は3年前の昭和HDの増資が架空ではなかったかとして「証券取引法」違反の嫌疑でAPFに対して強制調査を行った。昭和HDの労働組合は、以前も増資を機に経営権を握ったファンドに痛い思いをしていたことから、APFへの資金の流れについて監視を強め、団体交渉でも追及を行っていたが、APFの徹底した秘密主義のため、組合は立て看板を立て、抗議集会を開くなどの闘いを展開した。これに対し、APFは労使慣行を無視、協定破棄、人事考課での差別など、さらに朝礼で抗議の声をあげた組合役員、組合員15名に対し処分などを行って来たことから、組合は10年9月、不当労働行為だとして、都労委に救済を求め提訴した。昭和HDのIRを見ても昨日の尋問の件は載っていないが、以来、都労委を舞台に、経営陣と組合との攻防が続いている。
そして、その尋問の席で、此下CEOが何ら反論も釈明も具体的に出来なかった意味は大きい。