本紙でも既報のように、去る7月4日の判決(神戸地裁。佐野哲生裁判長)は、被告である出版社「鹿砦社」(兵庫県西宮市)の松岡利康社長に懲役1年2カ月、執行猶予4年の有罪を言い渡した。 名誉毀損になると判断したわけで、この報道に接した読者はイコール、記事に真実性はなかったと思って当然だ。 だが、その判決文(要旨参照)を見てみると、「アルゼ」(ジャスダック上場)に関する記述で、すべて事実の公共性無しと主張した検察側と異なり(表参照)、裁判所はさすがに上場企業のトップだった岡田和生氏に関する多くの部分は公共性ありとしている。 ところが、ライバル会社に書籍を買い取ってもらっていた事実を持って(誤解を恐れずに言えば、買い取りはこの業界ではよくある話)、そうであっても、出版目的の公益性がないと断じ、その記事の真実性を判断しなかったことがわかる。 全国紙が本事件で、アルゼ側が勝訴しているにも拘わらず社名を出さない、同社社長に元警視総監が天下っていた、さらにアルゼ記事において鹿砦社と協力関係にあった人物のところが強制捜査されている事実などを総合すると、判決で少なくともアルゼ分については、記事の真実性を判断すると「無罪」となるため、買い取りの事実をこれ幸いに、出版目的の公益性無し=名誉毀損と判断したと思わずにはいられない。 だが、こうした指摘をキチンと報道した大手マスコミは見当たらない。 起訴前の長期拘留、起訴後も保釈を認めなかったことといい、この事件、名誉毀損に名を借りた言論弾圧の要素が強いことは明らかだろう。…