ここ数年で、わが国でも「クラウドファンディング」という資金調達方法が伸びて来ているという。
我々フリージャーナリスト、なかでも訴訟リスクが高い事件や告発もの中心のノンフィクションライターは、部数減で苦境の週刊誌は敬遠するし、『現代』も潰れた今、発表出来る媒体はほとんど無くなり、“絶滅危惧種”状態だ。
本で発表するという手もないではないが、出版社もリスクの高い分野は避け、またお手軽なハウツー本が売れる昨今とあっては同様、なかなか企画は通らない。また、例え通っても取材費込みが常識で、そうなると真面目に取材すると大幅赤字になるのが現状だ。
そんななか取材費調達、さらには出版社も敬遠なら自費出版までの資金調達も可能にしてくれるというのがこの「クラウドファンディング」という方法だという。
いったい、どういう仕組みなのか。
最近、「GOSTAGE」というクラウドファンディングの支援サービスを始めた(株)「ディサイファ」の小西康彦社長(横写真)に話を聞いてみた。
ーークラウドファウンデングも、平たくいば借金で、怪しげなケースも多いファンドによる資金集めなどとも結局、同じということはないですか?
小西「それはひじょうに誤解されていますね。
借金なら、必ず返済しなくてはなりません。それも現金でです。また、ファンドの場合、元本保証はないですが、逆に儲かった場合、それに見合ったリターンをしなければなりません。
しかしクラウドファンディングでは現金で返す必要はないですし、寄付を募ることも可能です。また、例えクラウドファンディングで集めて出版した本がベストセラーになっても、基本的に支援者(資金を提供する方)に払う必要はありません」
理解し易くするため、具体的な事例を設定してみよう。
例えばAさんが反原発の立場の自費出版告発本を出したいと考え、クラウドファンディングで取材費込みで100万円の資金を募ったとしよう。
小西「あくまで一般的ケースでいうと、1口2000円前後のココロザシ層、5000円から1万円のメイン層、1万円から10万円のVIP層の3層で募集します(例えば、最初から寄付者も募るなど、細かい設定可)。この場合、ココロザシ層には本が出たらサインして1冊贈呈する、メイン層には複数贈呈する、本と併せ取材で得た特典映像や音声を提供するのもいいでしょう。そしてVIP層には限定の取材報告会を行うとか。要するに、銀行融資などと違って支援者には貸し手のように現金で返す必要はないんです。
一方、ファンドと異なるのは、上記のような約束で資金を集めてますので、その約束さえ果たせばいい。例えばの話ですが、その本がベストセラーになり1000万円の印税が入ったとしても、それはすべてプロジェクトオーナー(企画を立てて資金を集める方)がもらえます」