■プロフィール 投資歴17年、出版社勤務の兼業投資家。資産は2015年に一時1億円越えとなるも現在は横ばい近辺で推移。投資に必要なのは1に「メンタル」、2に「需給」、3に「ファンダ」だと考えており、勝ってもおごることなくたえず反省を繰り返し、安定して資産を増やす投資を心がけている。
≪先週の相場振り返りと今週の見通し≫
先週金曜日の日経平均株価(冒頭写真)の終値は21,156円と、前週比+465円(前週+335円)の上昇となった。そしていつものように、土曜朝の日経平均CFDを確認すると21,223円と、為替が円高方向に向かっているにもかかわらず、堅調に推移している。この株高の原動力(※特に金曜日の10時半過ぎから)となったのは、ゴールドマンサックスをはじめとしたヘッジファンド勢の損切だという。確かに…トレーダーズウェブの13日先物手口をみてみるとゴールドマンサックスはTOPIX先物を9418枚もの買い越しとしている。彼らが白旗をあげたことがきっかけとなり導火線に火がつき、オプション取引や、日経平均リンク債、個人のベア型株式を巻き込んで火がついたといったところか―――。
また、先週の日本株上昇の背景には共同通信やその他メディアが、「自民・公明両党で300議席をうかがう展開」と一斉に報道(横写真=「毎日」10月12日)したことも大きいだろう。加えて10月下旬から始まる日本企業の決算に大きな期待をかけている、とみていい。1Q時の企業決算が終えた7月末時点で日経平均のEPSは1395円程度だったが、その後直近で2月期本決算の小売企業決算が出揃ったことでEPSは上げてきており、10月13日現在、1432円となっている。いま現在、この日経EPSの見通しに対するレポートは出てきていないが、仮に最大値で5%増益の1500円程度まで上昇した場合、日経平均のPER14倍は、21,000円となる。北朝鮮リスクが燻ぶるどころか、種火が見える状況とあっては、このあたりが関の山だと考え
たほうがいいだろう。
また、先週の本稿でも触れたが、13日時点で、日経平均のPERは14.77倍、TOPIXは16.34倍と、特にTOPIXに関しては、平時の日本企業の平均PERである16倍を越えてしまっているので要注意。そしてもっともっと注意しなければならないのが米国のNYダウ。こちらはどう考えても割高だとしかいいようがないPER19.3倍となっている。NYダウは、2000年以降PER13倍~17倍の間を推移してきた歴史が、「いまが割高だ!」と警鐘を鳴らしている。また、すでに決算を終えた金融大手は、事前の予想がさえなかった中、好決算といえる数字を叩きだしたにもかかわらず、軟調となっているのが気がかりだ。
米上院では今週にも、税制改革の前段階として「予算決議」を採決する予定であり、「税制改革法案」そのものよりも可決は容易だといわれている。…ただ、上院が予算決議を可決できなければ、これまでの株式市場での盛り上がりが水泡と化すことになり、この予算決議に関しては、情報を追い続けたほうがよい。13日にはムニューシン米財務長官が「12月上旬までの法成立を目指す」としたが、この強気は裏が取れていての発言なのかははなはだ怪しい。「上院では財政赤字拡大を嫌う勢力(フリーダムコーカス)が一定数おり、彼らの説得は難しく年内の可決は見通せない」とは、先週の本稿で記したとおりだ。
そして今週からは、ますますトランプ・米国に対して、真っ向から軍事的対応を匂わす「北朝鮮動向」から目を離せない。16日から実施される米韓合同軍事演習や、23日から実施される、在韓米国人の避難訓練は、朝鮮半島にB1B爆撃機、原子力潜水艦や、原子力空母「ロナルド・レーガン」を集結させた中で韓国軍と合同で行われ、これを前にして抗議の意味でのミサイル発射がありえる。しばらく不気味な沈黙を保っている北朝鮮ではあるが、とくに緊張が緩和したわけではないことは忘れずに相場に向かいたい。また、安部首相の「北朝鮮情勢は年末から緊迫する。暮れから来年にかけては選挙をする状況ではなくなる」の発言は見逃せない。トランプ大統領が5日に発言した「嵐の前の静けさ」も、後日、「北朝鮮問題を念頭においてのものだ」と認めていることから、北朝鮮問題が株式市場を直撃する日は必ずくるだろう。
そんな今週のストラテジーは「10月SQ値20958円からの展開をみる週」としたい。先週も日経平均株価は強烈に上がっているので、海外勢は「日本株の大幅買い越しをした」と推察され、5週連続(4週は強烈買い越し、1週は多少)の買い越しとなったはずだ。また、日経平均株価は21年ぶりの新高値だということで、上はスカスカの真空地帯。通常だったら、買わなきゃバカ!の相場展開である。それでも、ここ2週間相場をつぶさにみてきた筆者には、個別株と指数のギャップに猛烈な違和感を感じてしまうのだ…。また為替も同様。明らかに円高に向かいたがっているにもかかわらず、日経平均の指数だけが上に行ってしまった変な感覚だ。日経平均のけん引役であるNYダウにしても、商いの乏しい相場つきで木・金曜日は小幅な陰線だった。韓国のKOSPI指数も金曜日は上は試せなかった。
いまのところの本線は、テクニカル指標も過熱ランプが点灯し続けており(横写真=「日刊ゲンダイ」10月16日付記事)、週明け月曜日の後場あたりには相場はもみ合い形状となり、今週はいったんSQ値である20,958円を目指す展開になる、と考えている。そこからはSQ値を上回って推移できるのか? 下回ってしまい上にでてこれなくなるのか? これを見定めながら売買をするつもりだ。また為替には要注意。現在のドル円は111.85円だが、金曜深夜につけた111.68円を下回ってくるとさすがに株価は上がる理由を見失う。※日銀短観での想定レートは109.29円である
ただ仮に、前述したような流れでなかった場合、ようするに日経平均株価が出来高を伴って一気に下落することがあろうものなら、全軍撤退してベア型の日経指数連動型のETFを購入するか、日経平均の指数の寄与度が高い銘柄を空売りすることをオススメしたい。現在の日経平均採用企業の実力(EPS)では、いまが高値圏であることは疑いの余地がない。また…逆に、日経平均株価が留まることをしらず、さらに上を目指した場合は、きっぱり諦めるのがよいのではないか。9月8日には日経平均株価は19,275円であり、現在は1ヶ月間で1900円を越える上昇をしていることを忘れてはならない。