11月9日、書籍『福田君を殺して何になる』の出版禁止の仮処分申し立てが却下されたのは本紙でも既報の通り。
しかし、冒頭に掲げた「毎日」(11日)の「社説」のように、概して大手マスコミの見方は筆者・出版側に辛口だ。(まだ福田君が損害賠償を認める別件訴訟の審理は始まったばかりだが……)
自分たちは、どう考えても効果が薄い巨額の広告料を大企業などから取りながら、決定前に本書を増刷した事実に対し、「待つのがせめてもの倫理ではないか」とまで注文を付けている。
こうした煮え切らない態度を取るのは、今回、福田君が仮処分申し立てに到った背景に、「弁護団」の大きな“圧力”があった可能性があるのだが、その点を意図的に避けているからではないのか。
本紙に対し、今回の仮処分却下を受け、著者の増田美智子氏(上写真)と、とりわけ出版したインシデンツこと寺澤有氏が忌憚のないコメントを寄せてくれたので、それを紹介しておく。
まずは、増田氏から。
今回の決定では、福田君が実名表記に同意していた、事前の原稿確認の約束など存在しない、など、こちら側が主張してきたことがおおすじで認められ、おおむね満足しています。
本は、情状面から福田君に有利なものであり、被告に社会的制裁を与えるために実名を表記してきたこれまでの報道とは一線を画すものです。本を読めば、彼の名誉や人格権を貶めるために書いたものでないことは一目瞭然。にもかかわらず、仮処分を申し立てるというのは、彼の意志とは無関係に、弁護団が自分たちへの批判を抑えようとしたものと考えざるを得ません。
今回の仮処分申し立てや、損害賠償請求訴訟の提起により、まるで福田君が、実名表記を嫌がっているような不遜な人間であるとのイメージが、世間に広まってしまいました。弁護団は、この本に書いた、反省しようと真摯に努力する福田君の姿を、弁護団自身で否定してしまった。
広島地裁の決定では、こうした弁護団の姿勢には触れておらず、福田君だけが悪いことになっているので、その点は残念に思います。
今回の決定により、より多くの書店や図書館で、本書を扱ってくれるようになると思います。一人でも多くの方に、本書を手にとってもらえれば幸いです。読んでいただければ、出版の公益性や、弁護団による仮処分申し立ての真意が見えてくると思っています。