左側下の預金通帳のコピーをご覧いただきたい。 105万円、正確にいえば、105万7025円の残高があることがわかる。 そこで、S子さん(70歳代)は最寄りのみずほ銀行「本郷」支店に全額引き下ろしに出向いた。 ところが、通帳には5356円しかないと言われた。 そんなバカなと思われるかも知れないが、現実に、そういう事態が起きていた。 通帳では105万7025円と残金はなっているのに、下に掲げたように、「元帳」上ではその金額の上に二重線が引かれ、「本行取消」になっていたのだ。 誤解のないように言っておくが、これは記帳忘れの結果ではない。 上右側の現在とは異なる通帳の色、それに「みずほ」、「第一勧業銀行」でもなく、さらにその前身の「第一銀行」の行名が入っているように、まだ顧客がATM機械で記帳を行えるようになる前、顧客が窓口で通帳を出し、行員と対面し、お金の出し入れをしていた1965(昭和40)年に作成されたものなのだ。 したがって、銀行が保管している「元帳」と、顧客が持っている「通帳」との間に、記帳漏れで預金残高の差がつくことはあり得ない。そういうレベルの話ではなく、この通帳と元帳を見比べてもらえればわかるように、その表記そのものが食い違うという明らかなミスが起きていたのだ。 元帳では105万2000円が取り消しになっているのに、通帳上では同額が預金されたことになっている。 では、こうした食い違いが生じた場合、銀行はどういう処置を取るのか? 少なくとも、みずほ銀行の場合は、食い違いが生じたミスは認め、謝罪するものの、しかし、元帳が「取消」になっている以上、支払い義務はないと言い切った。 だが、顧客にすれば、少なくとも当時は、預金通帳が銀行にいくらお金を預けているのか唯一、証明するものだったはず。ミスを認めるなら、公的銀行が責任を取って通帳通りの額を補填して当然との意見もあろう。 それにしても、なぜ、こんな事態になってしまったのか? また、なぜ、40年も前のこの通帳がいま問題となっているのか……(続く)。…