金銭トラブルが絶えず、相撲世界の闇の1つともいわれる「親方株」(年寄名跡証書)問題ーーそんななか、何と先代親方が親方株を借金の担保に入れ戻してくれないという前代未聞とも思われる訴訟が提起されたことから本紙で折に触れ取り上げて来た訴訟の判決が8月2日、横浜地裁川崎支部であった。
春日山親方(冒頭左写真。元幕内・浜錦)が原告。先代親方・岩永久祥氏(同右。元幕内・春日富士)とY氏が被告(平成25年ワ第942号。年寄名跡証書引渡請求事件)。
同訴訟で、岩永氏は、春日山親方が別の親方株を5000万円で買おうとした際に一部資金を貸したと主張。
しかし、始関正光裁判長はその主張を排斥した。
だが、春日山親方が主張する、岩永氏の借金の担保にY氏が預かっているとの主張についても、そうした被告ら側の発言があったことを認めながらも、「原告に対する債権の担保として被告Yが本件証書を所持しているという発言」と認め、春日山の親方株には1億8000万円の価値があるとして、原告はまだ840万円しか支払っていないとして、その差額約1億7000万円を支払い、それと引き換えに被告側は親方株を引き渡せとの判決を下した。
正直、驚きの判決だ。
繰り返すが、始関裁判長は、春日山親方が何ら借金していないことを認めたのだ。
しかも現在、日本相撲協会は親方株を巡る金銭トラブルを問題視し、親方株の売買を禁止し、親方株を協会預かりとしているはず。
ところが、そんな最中、1億7000万円もの支払いをしないと親方株を引き渡さなくていいと、相撲協会の方針に逆行、親方株の売買を活性化させるような判決を下したのだから。