●合併特例債を癒着業者にばらまき、資金を還流させる? 本紙が6月5日にも報じた、安倍晋三代議士の地元・山口県下関市による新博物館建設計画疑惑ーー安倍代議士の“国家老”=江島潔市長は、この6月中に本議会で可決、正式決定の目論見だった。だが、地元住民の反対の声に、市会議員の間からも疑問の声が噴出、その結果、この計画を審議する6月22日の総務委員会は賛否の採決をせず、9対8の賛成多数で「継続審議」とすることを決定。そのため、6月中の本会議提出、可決、正式決定はなくなった。 この博物館、 総事業費約100億円という、下関市としてはとてつもなく大きいプロジェクト。ところが、何を展示するかもよく検討されないまま工事や完成後の博物館維持を行う業者選定だけが先走って行われたため、今年2月の合併にする新下関市発足で入って来る特例債約450億円をともかく底が就くまで公共工事に回し、安倍・江島両陣営の息のかかった業者に受注させ、その利益の一部を還流させて懐に入れるのでは、との疑惑が囁かれていた。 ●落札業者の問題点、安倍代議士との接点 その疑惑を呼ぶ最大の根拠は、PFI方式で受注が決定した「プランハウス」なる地元業者を中心とするグループ。 このPFI方式、従来の公共事業方式と違い、民間側が事業計画から建設、運営まで一貫して行う。公募を原則としているが、その期間が約1カ月と極端に短かったこと、どうせ公募に応じても安倍・江島陣営の息がかかっていなければ受注できないということで、実質、プランハウスグループの随意契約となったかっこうだ。 このプランハウスの社長、「背任行為を行った」と民事訴訟を起こされており、複数の応募があればそれを理由に落とされても無理ないところ。しかも、今年5月には日本青年会議所中国地区の球技大会前夜祭で、同社社長が酔ってとはいえ、会長に暴行を働いて新聞ネタにまでなっている。そして、この佐野公一社長とは、何と先の安倍代議士の衆議院選挙時、自ら安倍陣営の選挙カーの運転手をしていた、地元ではよく知られた“安倍代議士側近”なのだ。 一方、この100億円を超える予算にも疑問の声が上がっている。内訳は新博物館建設費が30億2900万円、駐車場2億8000万円、管理運営費54億3100万円(20年間)といった具合。しかし、新博物館建設に伴い役目を終える旧博物館の年間維持費は約2700万円。新博物館の年間維持費はその10倍にもなる。また、当初、プランハウス側はこのバカ高い管理運営費をさらに8億8500万円(20年間)上回る見積もりを出していた。その一方、建設費の見積もりは以前は30億2900万円より5億円低くなっていた。しかも、地元専門家の間ではこの程度の上物は10億円程度で建設可能との指摘さえあるのだ。 ●PFI方式は究極の管制談合では? 以上のような事実から、地元の反対派の間からは、安倍・江島陣営の取り分を多くするため、実態とはかけ離れた数字を算出している結果ではないかとの声が出ている。そして、そもそもPFI方式はただ受注額を低めにすれば落札できる入札方式と違い、責任ある業者に、行政側が建設、運営をそれぞれ別業者に直に頼むより予算も安く済むということで導入されたわけだが、癒着企業に公共事業費を出来るだけ高くぶんどりさせる“究極の官制談合”として悪用されているとも。 こうしたなか、下関市民有志が計画「白紙撤回」の運動を始め、冒頭で述べた総務委員会で可決が見送られるまでのわずか10日で約1万人近い市民の賛成署名が集められた。そして現在も、「白紙撤回」を目指し、さらに署名集めが行われている。 中央でも、余りに頑なな「反中国」、また、自民党の「靖国参拝を支持する若手国会議員の会」の勉強会で中心的役割を果たすなど、その論拠無きタカ派姿勢では国の行く末を誤った方向に導きかけないと、ポスト小泉レースでも赤信号が灯りつつある安倍代議士。この機を同じくした地元・下関での博物館建設計画“見送り”は決して偶然の一致ではなく、安倍晋三という政治家の限界を示しているといえそうだ。…