筆者・田沢竜次(フリーライター)。1953年東京生まれ。編集プロダクション勤務などを経て1983年からフリー。85年『月刊angle』連載を基に『東京グルメ通信・B級グルメの逆襲』(主婦と生活社)を書き下ろし、また文春文庫の「B級グルメ」シリーズでも活躍。B級グルメライターとして取材・執筆を続け今日にいたる。一方、大学の映画サークルで自主上映するほど映画にも精通。著書に「B級グルメ大当りガイド」「ニッポン映画戦後50年」など。
ドキュメンタリー映画『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』を観た。加藤和彦(1947~2009)は1967年、北山修、はしだのりひこと3人でフォーククルセダーズを結成して発表した『帰ってきたヨッパライ』がメガヒット。その後も、『悲しくてやりきれない』『青年は荒野をめざす』『あの素晴らしい愛をもう一度』などのヒット曲の作曲を担当した。いずれも20~21歳の頃だから、まさに天才である。
こちとら中学2年の冬休みの頃だっただろうか、ラジオのヒットパレードで流れていた『帰ってきた~』を聴いて、そのあまりの斬新、シュール、アナーキー、ギャグのセンスにぶったまげたよ。これまで馴染んできたポップスでもフォークでも歌謡曲でもないジャンルを超えたフォークルという変なグループにすっかり魅せられてしまった。同じ頃、高石ともやの『受験生ブルース』もヒットして、「関西方面のフォークは面白いな」と思っていた。
そのフォークルの第2弾が『イムジン河』だ。ところが南北朝鮮分断の政治問題のあおりで発売中止(のちに復活する)になったのでまたビックリ。その直前、『ヤング720』という毎朝7時20分から放映していいた若者向けバラエティ番組でフォークルが歌うのを観たんだよ。クラスの友達と「『イムジン河』っていいよな」と話したのを覚えている。映画でも前半でこのことに触れているんだが、そこで思い出したのが、井筒和幸監督の傑作『パッチギ!』(2004年)なのだ。