アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ

内部・外部告発、情報求む!

(弁護士などのプロが調査。ただし、公益性あるケースに限る)

鹿児島県警の情報漏えい事件――出版社社長が、鹿児島県警と本部長を犯人隠避罪などで地検に告発

 6月21日、鹿児島地検は、内部情報を漏らしたとして、鹿児島県警の前生活安全部長・本田尚志容疑者(冒頭右写真。60)を国家公務員法(守秘義務)違反で起訴した。
しかしながら、その内部情報とは、ストーカー事件など不良警官の不祥事に関する内容で、にも拘わらず、「野川明輝本部長(冒頭左写真)が(不祥事を)隠ぺいしようとしたことが許せなかった」と、逮捕後の6月5日、さらに勾留するかどうか決める裁判手続きのなかで本田被告は主張していた(本部長は否定)。
本田被告の主張が正しければ「公益通報」となり、同被告は逮捕されないどころか、警官の不祥事潰しなどを阻止した正義のヒーローということになる。
しかも、この事件、本田被告が情報漏えいしていたことがわかったのは、鹿児島県警が4月8日、本紙と同じ告発系ウェブメディア「ハンター」(福岡市)事務所と、発行人・中願寺純則氏の自宅を家宅捜索。本田被告は北海道在住のフリー記者・小笠原淳氏に内部情報を提供していたが、北海道と鹿児島では距離が遠く取材が困難であり、また、以前から面識があるハンターの方と情報共有していて、家宅捜索の結果、その本田被告が送った情報がハンターのPCから見つかったためだ。
ハンターには、2023年10月、別の鹿児島県警署員が情報提供した県警の「告訴・告発事件処理一覧表」の一部と見られる画像が掲載されており、県警に目を付けられていた。前出の4月8日のハンターへの家宅捜索の結果、その署員も地方公務員法違反(守秘義務)で逮捕、懲戒免職に。その捜査過程で前述のように本田被告の情報漏えいも明らかになり、本田被告は5月31日の逮捕となった。本田被告が小笠原氏に文書で情報漏洩したのは今年4月上旬と見られる。
以上のような経緯から、警察が情報を得ようと報道関係者を捜査したことに対し、新聞労連は「民主主義社会では許されない権力の暴走だ」、日本ペンクラブは「ジャーナリストにとっての情報源の秘匿は最高位の倫理」だとして、今回の行為を前例としないように求めている。また、小笠原氏は本田被告の行為は「公益通報」であり、ハンターへの家宅捜索は「前代未聞の報道潰し」で、決して許されないという。
県警が家宅捜索した際、「捜査令状も見せず、押収したパソコン内から文書データを同意なく削除した」と中願寺氏は「毎日」取材に答えている。
こうしたなか、6月14日、木村浩一郎氏は、ハンターを家宅捜索したことにつき、鹿児県警と、本田被告が警察不祥事を隠ぺいしようとしたと主張する野川本部長を被告発人とし、特別公務員職権濫用罪、またハンターは今年3月19日、医師会職員の看護師への強制性交事件につき、その職員父親の県警元警部補の不当介入の結果、不起訴になった可能性を報じており、犯人蔵匿罪・犯人隠避罪の容疑でも告発した。
この告発した木村氏は、ハンターの中願寺氏とは面識ないものの、小笠原氏とは、北海道警の不祥事を追及した著書『見えない不祥事』(上左写真。2017年9月刊行)を、木村氏の出版社「リーダーズノート」から出している仲であり、「漏えいすべき情報価値(不祥事や犯罪性)があったから情報漏えいされたので、情報漏えいをことさら問題視するのは本末転倒で、警察の思う壺」、「この強制捜査は鹿児島県警だけの問題でなく、すべての報道機関、ジャーナリスト、出版人に対する、警察の『脅し』だと受け止め」、今回、告発したという。

告発状  (←ココをクリックすれば見えます)

 

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