「日本医師会」は、実に17万人を超えるわが国の開業医や勤務医で作る業界団体。医療行政をつかさどる厚生労働省や、いわゆる「厚労族」の国会議員に強い影響力を持つ圧力団体だ。
その日本医師会の現在、ナンバー2である筆頭副会長(副会長は3名)の地位にあるのが茂松茂人氏(冒頭写真)。1952年大阪府の出身で、大阪医大を卒業。現在、大阪府茨木市で整形外科医院を開業している。政治団体「日本医師連盟」の筆頭副委員長でもある。
今年6月、2年に1度の日本医師会会長選(全国380人の代議員による投票)があるが、これは松本吉郎現会長(右下写真。埼玉県)の続投が濃厚だ。
ただし、茂松氏を知る者によれば、「大変な野心家。次期会長の座を狙っていた。次の次の会長選となれば茂松氏は76歳。そんな歳で会長になった例はないが、この高齢化社会。可能性はゼロではない」と漏らす。
今回、松本会長の続投がほぼ決まっているのは、2024年度診療報酬につき、初診料、再診料、入院基本料を引き上げることで、勤務医や看護師などのベースアップが出来ると評価されている点が大きい。何しろ、初診料の引き上げは2004年度以来のことなのだ。
中央社会保険医療協議会(中医協)は、その診療報酬などの改定を行う厚労相の諮問機関。保険料を支払う側(7人)、医師など医療する側(7人)、公益を代表する大学教授など(6人)の計20人が話し合い、その答申に基づき厚労相が2年に1度、価格改定を決定する。
茂松氏は、この中医協の医師などの診療側委員の1人。しかもこの診療報酬側の7人の委員の内3人が医師会から出ており、茂松氏が実質、診療側委員のトップ。
したがって、診療側の立場で、医師の診療報酬を上げて、医師の診療を安定させるのが役目。ところが、今回の中医協は、特定疾患管理料算定から「高血圧」、「高脂血症」、「糖尿病」を外し、生活習慣病の疾患についての点数を引き下げた。