「共同通信」が5月26日に報じた記事が、五輪関係者、また五輪種目競技団体関係者などの間で話題を呼び、そしてかなりの波紋が広がっているようだ。
その記事とは、今年3月、「テクノサイエンス」(千葉県柏市。樫本和久代表)というサプリメント会社が、(公財)「日本アンチ・ドーピング機構」(JADA)、(公財)日本スポーツ仲裁機構、(公財)日本水泳連盟の3団体に対し、総額約3億6000万円の損害賠償請求と、HPと主要全国紙への謝罪広告掲載を求めて東京地裁に提訴していたというもの。
訴状などによれば、同社の製品を、東京五輪出場を目指していた競泳選手が飲んでいたところ、2019年5月30日開催の「ジャパンオープン2019」の試合に出場後のドーピング検査で陽性に(3カ月の試合出場停止などの処分)。
そこで調べたところ、テクノサイエンスの製品から、禁止されている「オスタリン」という成分が含まれているとの結果が出た。
しかし、テクノサイエンスとしては、そもそも自社製品に医薬品成分のオスタリンを入れていないし、混入することもあり得ないと。要するに、うちの製品からオスタリンが出たとの判断は虚偽で、にも拘わらず名誉を傷つけられ、取引先から切られるなどの損害を受けたから、その損害を補填し、謝罪広告などを出して謝罪しろというものだ。
ドーピングの製品を提供していたとされる会社が提訴すること自体、異例のことだが、逆にいえば、テクノサイエンスはそれだけ自信を持っているということだろう。
そして、本紙がこの件に注目するのは、今後の裁判の展開次第では、五輪を実質仕切っていた「電通」まで含め、五輪スポーツ利権の闇の部分が暴かれる可能性もあると見るからだ。
読者は当然、選手にも重い処分が下るし、飲んだ製品の会社も大きな経済的ダメージを食らうことは見えているから、どの製品がドーピングで引っ掛かったか厳密な調査・分析を行った結果と思っているだろう。
実際、この陽性になった競泳選手の場合、9種類のサプリメント、医薬品3種類を飲んでいたとされる。