新年早々、兜町界隈のきな臭い噂を書くのも縁起が悪いので、2022年初回は株式投資家に評判の悪い岸田政権について取り上げる。
「新しい資本主義」といっても、実際には理解していない投資家がほとんどだろう。左派寄り、共産主義的と批判する前に、元となる原丈人(じょうじ)氏の著書は読んでおきたい。
筆者は原氏の著書「『公益』資本主義」(文藝春秋社)を読んだ。2016年2月に「日経産業新聞」にて原氏の連載記事があったが、内容は著書と同じだ。
例として、2008年のアメリカン航空の場合。経営破綻の危機に直面して、従業員に総額400億円の給与削減を要請。従業員は同意。ところが、経営陣はこうして破綻を回避した功績で240億円に相当するボーナスを受け取ったという出来事だ。日本なら経営者が一斉に叩かれるだろう。しかし、米国では何故悪いのか理解できないという。
また、株価を引き上げるために、利益以上の配当や自社株買いなど株主対策をすることで、長い年月かかる事業モデルには投資できないとも述べている。
同氏の著書を読めば、確かに言っていることは正しく、その通りだと納得するだろう。ただし、現実を見ると、2008年以降の日米国民の経済格差は開いているばかりか、韓国や台湾にも抜かれようとしている。日米の人材の流動化の違いもある。転職が普通の米国と、転職すれば所得が下がる方が多い日本とでは単純に比較できない。また、上場企業の場合、従業員は持ち株会に入っているはずだ。株主優遇は従業員優遇にもなることを同氏は無視しているように思える。