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<*新連載* 漢方専門家・平地治美の健康の勧め>「第26回 肺の症状が出やすいこの時期の対策」

筆者・平地治美(薬剤師。鍼灸師)。漢方の良さを伝えるため、日々の臨床では治療だけではなく自然治癒力を高めるための“養生”の指導に特に力を入れ、一般の人たちへの健康指導を積極的に行う。朝日カルチャーセンター新宿、津田沼カルチャーセンター等で「女性のための漢方レッスン」「舌診入門」「季節の過ごし方と食養生」などの漢方関連の講座を担当。和光治療院・漢方薬局(千葉市若葉区TEL043-232-6258)で治療。千葉大学医学部医学院和漢診療学講座非常勤講師。京都大学伝統医療文化研究班員。日本伝統鍼灸学会理事。漢方三考塾講師。著書に『げきポカ』(ダイヤモンド社)、『舌を見る、動かす、食べるで健康になる』(日貿出版)。「平地治美の漢方ブログ」発信中。

  秋から冬にかけて空気が乾燥し、肺の症状が出やすい季節になります。
肺はとてもデリケートな臓器で,適度にしっとりと湿っているのが良い状態です。カラカラでもビショビショでも働きが悪くなります。
この時期は空気の乾燥によりノドや気道の粘膜の潤いがなくなり、日ごろ肺に問題がない人でも咳が出やすくなります。また、漢方では「肺」というと呼吸器だけではなく鼻、皮膚なども含みますので、喘息だけでなく、鼻炎や皮膚疾患をお持ちの方も注意が必要な季節です。
空気の乾燥や体の水分不足で充分な粘液を分泌できないと、粘膜の表面はカラカラに乾いてしまいます。適度な潤いが無いと粘膜を守ることができません。少しの刺激でダメージを負いやすくなってしまい、咳や痛みが発生するようになります。乾燥が起こっているときの痰は量が少なく、その分粘りが強いため流れが悪くなり、ノドにはりついて排出しにくくなります。水分不足ではりついた濃い痰を排出するために、激しい咳が出るようになります。こみ上げるように咳き込み、顔を真っ赤にして咳き込む人も多いようです。
対策としては


・加湿器を使用する
・水分補給をこまめに行う
・潤いの多いものを食べる
など、乾燥を防ぐ工夫をすることが必要です。
それでもなかなか改善しない場合、乾燥によって起こる症状を改善する麦門冬湯(ばくもんどうとう)という漢方薬があります。
麦門冬湯は金匱要略(きんきようりゃく)という医書に記載されている処方です。症状として「大逆上気(たいぎゃくじょうき)」..……顔を赤くして咳き込むことが大きな特徴です。
 痰はない,またはあっても少量で切れにくいことが多く,乾燥した条件下で症状が悪化します。感冒後の嗄声にも良く効きます。
麦門冬は庭や道端で見られるジャノヒゲという植物の根から得られる生薬で、体内に潤いを与えせき止めて痰をきる作用があります。
麦門冬湯には主薬である麦門冬の他に、
半夏(はんげ)
粳米(こうべい)
人参(にんじん)
大棗(たいそう)
甘草(かんぞう)
の全部で6種類の生薬が含まれています。
麦門冬と半夏…せき止め、痰を切る
麦門冬、粳米、人参…乾いた体に潤いを持たせる
人参、大棗、甘草…体に元気をつけていく
つまり麦門冬湯は、咳などの原因となる体内の潤い不足を補いながら咳を止め、弱った体に元気をつけていくような漢方薬ということができます。
そのため、体が弱りがちな妊婦さん、小児、高齢者にも安心して使うことができる処方です。
特に高齢者は加齢とともに粘膜の潤いが低下して空咳が出る方が多いようです。
また、「ACE阻害薬」に分類される降圧剤の副作用の一つに空咳がありますが、この場合は痰があまり絡まず、コンコンと空咳だけでるのが特徴です。このACE阻害薬の副作用による空咳の緩和にも、麦門冬湯が有効なことが多くあります。
麦門冬湯はドラッグストアなどでも手に入れやすい処方ですし,失敗の少ない処方でもあるので気軽に試されてはいかがでしょうか。

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