1986年4月に起きたチェルノブイリ原発事故によって、大量の放射性物質が拡散したが、その影響は今なお続いている。本ドキュメンタリーは、2002年、アメリカのマリオン・デレオ監督がチェルノブイリ原発から80キロのベラルーシ共和国を訪問し、小児病棟、乳児院等を取材した記録だ。
放射線被害を最も受けるのは子どもである。発育期にある遺伝子を傷つけてしまうからだ。チェルノブイリ事故後、周辺地域では甲状腺がんを発病したり、発育不良の子どもの数が急増した。なかでも心臓疾患は「チェルノブイリ・ハート」と呼ばれ、高価な手術代と医療技術の遅れで、手術を受けられずに亡くなる子どもが多い。
映像のなかでは障害をもった乳幼児や、やせ細った心臓病の少女など、正視するのがつらい映像が映し出されていく。
もちろん、ここで出てくる疾患、発育不良のすべてが被曝によるものとは言えないだろう。だが、国土の大半が汚染されたベラルーシで、小児病棟を新たに設置しなければならないほど患者が急増しているのは事実である。健常児の出生率がなんと15~20%。その健常児も免疫システムが弱っているため、病気に罹りやすいという。
ところが、「避難地域」と指定されていないこともあり、政府による補償はない。