野田首相が今月末、訪米するが、そこで環太平洋連携協定(TPP)交渉に参加表明をするかに注目が集まっている。 全国農業協同組合中央会(JA全中)が昨25日、東京・日比谷公園に4千人を集め、「TPPに参加すれば農業は壊滅的な打撃を受ける」「情報開示は不十分で、国民的な議論が尽くされていない」と断固反対を訴えたことは、大手メディア既報の通り。 TPPに参加すれば、とりわけアメリカから、“例外なき関税撤廃”を求められるであろう。コメ生産者をはじめ、多くの農家が反対するのも当然だ。 ただ、それ以前の問題として、日本のコメづくりはすでに大変な危機にさらされている。その現状と背景を明らかにし、日本のコメづくりをどうしていくべきかという方向性を示しているのが、本DVDだ。 稲作農家の時給は、なんと179円(2007年)。製造業の14分の1であり、最低賃金を大きく下回っている。これでは後継者が就かず、生産者がどんどん高齢化していくのも無理はない。「百姓の収入で暮らせねえから、百姓をしてねえ」(山形県長井市の生産者)。 どうしてこんな事態になってしまったのか。――戦後の政府による米国産小麦の消費奨励、減反政策。95年、工業製品を輸出する代わりに、農産物の輸入自由化を決めたこと。効率化のため大規模化を進めようとしたが、それが失敗したこと。こうした背景が語られる。 いま、主食であるコメを輸入自由化したら、どうなるか? 本DVDではメキシコの事例が紹介されている。メキシコは主食であるトウモロコシの輸入を自由化したが、価格がした際、庶民の食生活が大打撃を受けた。主食が国際価格の変動で危機にさらされるのは、食糧安保の観点から見てもリスクが高すぎるといえる。 今一度、TPP交渉参加を考え直すべきときではないか。 TPP問題をめぐっては、自由貿易による経済的恩恵も語られるが、「汗水流して耕しながら何百年かかってきた田畑を、私らの時代で荒らしてはいかれない。お金ばかりではないのよ」(秋田湯沢市の米生産者)という農家の言葉もあるように、事は経済だけの問題ではないのだ。 購入の申し込み、問い合わせは、アジア太平洋資料センター(PARC)まで。 (DVD/35分。定価 本体8,000円+税)…