以前は入居時に高額の「一時金」を取るなど、一般的に高値の華だった有料老人ホームだが、近年は価格破壊が進み、「一時金」無しかわずか、家賃も7?8万円と、一般のワンルームマンション並かそれ以下と、庶民にも手が届くようになって来ている。(冒頭写真=『サンデー毎日』1月20日号記事)
これだけ聞けば、実に結構なこと。だが、現実は「安かろう、悪かろう」というケースも少なくない。
具体例を見てみよう。
舞台は大阪府東大阪市の有料老人ホーム「Aステージ」(37戸)ーー。
ここの入居時にかかる「一時金」は28万円。家賃は5万8000円(管理・共益費込)。食事(別途契約)は4万円。かつての価格からすれば、夢のような低価格だが、実は驚くには値しない。
「これまでの有料老人ホームが高かったのは、まず『一時金』については取るのが慣例のようになっていて、あえていえば運転資金の確保や入居者が集まらない場合のリスク分を取っていたもので絶対に必要性があったわけではない。一方、家賃の高額さは自前の建設コストの返済のためだった」(業界事情通)
ところが、近年は高齢者向け住宅の建設に国が補助金を出すようになった上、そうして建設した住宅を介護業者が賃借するケースが増えて来た。建設コストの自己負担がないのだから、安いのは当然だ。
しかも、ここでいう有料老人ホームとは、介護付き有料老人ホームではなく、高齢者向け住宅を指す。
介護付き有料老人ホームは、法定の介護・看護スタッフを24時間体勢で配置し、最寄りの自治体から「特定施設」の指定を受けたホームを指す。入居者の個室は最低13?(約4畳)以上といった指導もある。これに対し、高齢者向け住宅はまず介護・看護スタッフを24時間体制で配置する必要がないからそのコストがかからない。それどころか、併設の訪問介護やデイサービスを利用してもらえば、その分、介護保険からの収入も見込める。その介護の上限報酬は入居者1人当たり月額 35万8300円にもなる(要介護5)。
「Aステージ」の場合、個室は9?。3畳にも満たず、部屋というより納戸並の広さだが前述のように問題ない。
この「Aステージ」の入居時の価格が1年少し前に変わった。