筆者・田沢竜次(フリーライター)。1953年東京生まれ。編集プロダクション勤務などを経て1983年からフリー。85年『月刊angle』連載を基に『東京グルメ通信・B級グルメの逆襲』(主婦と生活社)を書き下ろし、また文春文庫の「B級グルメ」シリーズでも活躍。B級グルメライターとして取材・執筆を続け今日にいたる。一方、大学の映画サークルで自主上映するほど映画にも精通。著書に「B級グルメ大当りガイド」「ニッポン映画戦後50年」など。
『モスラ』公開(61年)から3年後、『モスラ対ゴジラ』が公開された。水爆実験の恐怖の象徴たるゴジラと、平和の象徴モスラが人類のために戦うという善悪対決パターンものであるが、戦後と原子力をからませて観ると興味深いものがある。
たとえば、新聞記者の宝田明と星由里子が、ゴジラに蹂躙される日本の特使(?)としてインファント島に出向き「モスラの力をお借りしたい」と懇願すると、酋長から「お前たち、悪魔の火(水爆のこと)をもて遊んだ罰だ」と一蹴される。すると星由里子は、罪もない人々がゴジラによって命を落しているのですと泣き落とし。結局、モスラは死に瀕した老体でゴジラに向かってゆくが。ここで思うのは、東京オリンピックを控えてすっかり平和ボケして、被害者意識丸出しの日本人の姿だ。しかしこの身勝手な記者に扮した宝田明と星由里子の二人は3年前、ある映画でなんと第三次世界大戦=核戦争の恐怖に直面していたのだ。